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五十代の主婦は三月、業者から海外商品先物オプション取引の電話勧誘を受けた。
「今の状態なら原油は間違いなく値上がりする。この一週間か二週間が勝負」。最初は警戒したが、新聞で原油価格の上昇が報じられ、何度も電話で話すうち、担当者とも親しくなって気持ちが動いた。
取引の仕組みはよく分からなかったが、「五十万円の投資で原油価格が三ドル上がれば十五万円の利益」と説明され、五十万円でスタート。担当者に言われるまま、次々とつぎ込み、投資額は八百万円を超えた。
しかし、途中から市場価格が予想通りに上がらず、損失が生じた。担当者の勧めで市場価格が下がると利益が出る取引や金の取引も始めたが、穴埋めはできなかった。
弁護士に相談し、取引を終了したが、手元に戻ったのは二百六十万円ほど。三カ月で五百万円以上失った。主婦は「あんなに親しくしていたのに。お金を引き出されただけかと思うと情けない」と悔やむ。
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商品先物取引の一つ、海外商品先物オプション取引のトラブルが増えている。二〇〇五年度に全国の消費生活センターに寄せられた商品先物全体の相談は前年度に比べ大幅に減少したが、海外商品先物オプション取引は逆に前年度から倍増し、約百七十件あった。
相談者の半数は六十歳以上。業者から「絶対にもうかる」などと勧誘され、取引の仕組みはよく分からないまま契約をしたが、多額の損失が生じたケースが多い。八十歳代の女性は「ペイオフ対策が必要」と業者に言われ、約九千二百万円をつぎ込んだという。
海外商品先物オプションの相談の増加について、国民生活センターは「過去に被害が多発した外国為替証拠金取引の規制が強化されて、登録業者しか業務ができなくなり、それ以外の業者が海外先物に参入した可能性がある」と指摘する。
海外オプション取引は法規制がなく、今後も被害が増える恐れがあるため、同センターは消費者に注意を呼びかけるとともに、農林水産省と経済産業省に対し、法令整備を要望した。
商品先物被害に詳しい大田清則弁護士は「規制がない海外商品先物取引の被害の増加は予想できたこと。外為証拠金取引の規制で成果が上がったことを考えれば、同様の規制を考えるべきだ」と話す。
一方、農水省商品取引監理官室は、現行法令で対応できるとし「商品先物取引は金融商品取引法(六月成立)の対象ではないが、海外の先物取引では(対象の)ファンドに該当するケースもあり、運用次第で規制できる」と説明する。
◆オプション取引
商品を一定の期日までに一定の価格(権利行使価格)で買い付けるまたは売り付ける権利(オプション)の売買。買い付ける権利をコール・オプション、売り付ける権利をプット・オプションと呼ぶ。どちらも買い手は、プレミアムと呼ぶ代金を売り手に支払う。
例えば、コールを買って、相場が権利行使価格を上回ったとき、権利を行使すれば、その価格差(実際にはプレミアムも差し引いた分)が利益になる。この場合、プレミアム価格も上昇しているので、権利を転売し、プレミアムの差益を受け取る方法もある。
買い手の場合、相場の変動次第で大きな利益を得られる一方、損失は最大でも元本のプレミアムにとどまり、投資額を超えることはない。
しかし、取引の仕組みが複雑で、市場動向を把握したり、将来のプレミアムの金額を予測したりするのは容易ではなく、手数料も高額なことが多い。
海外の場合は、さらに為替の影響も受け、注文通りの取引が行われているかの確認が難しい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060720/ftu_____kur_____001.shtml