2006年07月16日(日) 03時06分
<悪質リフォーム>79歳女性、自宅失う 権利書持ち出され(毎日新聞)
悪質リフォームで、営業マンに家の権利書を持ち出され、無断で売られた被害者がいることが分かった。東京都新宿区内の無職女性(79)で、02年に家を退去し、現在はアパートで生活保護を受けて暮らしている。当時、役所や警察に相談したが、対応してもらえなかったという。リフォーム被害が社会問題化する前の、埋もれた被害者の存在が浮かび上がった。
◇アパートで生活保護に…
契約書類などによると、女性の家を売ったのは都内のリフォーム会社の元営業社員。同社によると、00年5月に入社し、同9月に退職した。
女性は当時、新宿区内の一戸建て(木造2階建て延べ約37平方メートル、評価額約3000万円)に1人で住んでいた。元社員は「外から見たが、このままでは危ない」などと言って上がり込み、その後連日のように訪問。電子レンジや冷蔵庫をプレゼントする手口で信頼を取り付け、次々とリフォーム工事を契約した。
契約は00年6月から7月の1カ月間で計13件、約200万円分。女性は「お金はない」と言ったが、クレジット契約を勧められ、書類に押印した。この過程で、元社員は「契約に必要」などと言って土地建物の権利書類を借り出した。工事は行われたが、同年11月、家は無断で都内の男性に所有権を移され、その後、金融関係者に移った。
女性はこの間の経緯を全く知らされず、01年7月、所有者から退去を求められて初めて家を失ったことを知ったという。売却代金は女性には渡っておらず、リフォーム代金はここから支払われたとみられる。女性は家の返還を求めたが、元社員は行方をくらませた。女性は「後になって思えば、工事書類と言われて印鑑を押した中に、売買書類があったのかもしれない」と話している。
これについて同社は「お気の毒だと思うが、当社は全く関知していない」として、一切の責任を否定。また、リフォーム問題に詳しい1級建築士の石田隆彦氏が家を調べたところ、工事の多くは相場の2〜3倍の高値で、契約と施工内容が食い違うものもあったが「社員への歩合などを考えると当社的には適正価格の範囲内。契約後に現場を見て施工方法が変わることもある」と釈明した。元社員は会社に届けた住所には住んでおらず「辞めた後の行方は分からない」という。
女性が家を出ることになり、初めて事情を知った親類が01年秋、区の無料法律相談や地元署に相談した。しかしいずれも「権利書を渡し、書類に押印した以上、どうしようもない」と言われたという。【悪質リフォーム取材班】
◇お役所体質で被害が拡大も
高齢者や障害者の権利擁護に詳しい荒中(あら・ただし)弁護士の話 私が受けた悪質リフォームの相談でも、00年ごろ被害に遭い、周囲が市役所などに相談したのに放置された例がかなりある。悪質リフォームは昨年社会問題化したが、その数年前から役所や消費生活センターには相談が寄せられており、家を訪ねれば契約が明らかにおかしいことが分かったはず。その時点で関係機関が情報交換し、連携して対応すべきだった。皆がそうだとは言わないが、社会問題化しないと本腰を入れないお役所体質が、救済を遅らせ被害を大きくした面がある。
(毎日新聞) - 7月16日3時6分更新
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