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■会見予定なし
「トヨタがリコールを怠る」−。生産台数で今年、米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界一に躍り出ることが確実視されるトヨタ。事件のニュースは海外の通信社を通じて世界を駆けめぐった。
しかし、当のトヨタは「落ち度はなかった」などと反論、事件発覚当日の十一日午後も経過などを説明したA4一枚の発表資料を報道陣に配るのみだった。欧州出張中の渡辺捷昭社長には報告したが、記者会見などを開く予定はないという。
トヨタは二〇〇三年十二月、幹部が国家試験の一級小型自動車整備士検定試験で問題を漏えいした事件では、首脳陣らがすぐに非を認めて会見などで謝罪した上、トヨタ関係の受験生に次の試験を辞退させた。今年五月の北米トヨタを舞台としたセクハラ(性的嫌がらせ)問題でも係争中にもかかわらず当事者の前社長を事実上更迭した。
不祥事のダメージを最小限に食い止める危機管理能力の高さを見せつけてきただけに、今回の対応について自動車業界からは「トヨタにしては手際が悪い」との声も出ている。
今回の事件で最大のポイントは一九九六年に判明したかじ取り装置「リレーロッド」の強度不足。トヨタは同年から改良部品を使ったが、リコールについては「事故につながる危険性の認識には至らなかった」などとして届け出なかった。
しかし、熊本県警はロッドが破損する不具合が九二年から九五年にかけて国内外で二十数件、リコールまでに八十件報告されていた点を問題視。九六年の判明時点で当時の品質保証担当の副社長や常務がこれを把握していたほか、ロッドの破損を社内基準で最高の「Aランク」の重要故障としていた事実から、リコールするのが妥当だったとの主張だ。
■食い違う件数
国内のライバルメーカーからは「これで事件化されるのであれば、おちおちモデルチェンジもできない」(幹部)などトヨタに同情的な声がある一方、「欠陥を隠す意図はなかったと思うが、生命に直結する部品なので、トップメーカーとしての認識が甘かったと言われればそうかもしれない」(元品質担当者)と厳しい指摘も出ている。
トヨタは〇四年十月になってリコールを届け出たが、国土交通省は「不具合の件数が熊本県警の数字とかなり開きがあるようだ」(リコール対策室)として注目。虚偽報告がなかったかどうかについて両者からの事情聴取を始めた。
■二の舞いも…
事件から一夜明けた十二日、トヨタへの消費者などからの問い合わせ件数は「通常とほとんど変わらず、混乱はなかった」という。「今後も捜査に全面的に協力する」として、リコール隠しで世間の批判を浴び、企業存続の危機にさらされた三菱自動車の二の舞いは避けたい構えだ。
トヨタは昨年十月に一度の対象台数としては過去最多の百二十七万台をリコール、今年四月に最高級ブランド「レクサス」でも不具合が見つかるなど品質問題が相次いで発覚。今回の事件は六月に品質担当の副社長を二人に増員、専任の専務も設けて対策に乗り出した矢先だった。「売れ行きに一時的な影響は出るかもしれないが、長引くものではないだろう」と話すある販売関係者は、欠陥よりもトヨタのその後の対応に大企業病の萌芽(ほうが)を見る。「組織が大きくなり過ぎて消費者の声が届きにくくなったのではないか」
<メモ>リコール制度
自動車の構造や性能が保安基準に適合しなくなる恐れがある場合、不具合の内容や改善方法を国土交通省にあらかじめ届け出し、無料で回収、修理することをメーカーに義務付けている。欠陥車を早期に発見し、事故や公害を未然に防止するのが目的で、国交省がメーカーにリコールを勧告、命令することもできる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060713/mng_____kakushin000.shtml