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トヨタ車をめぐるリコールの経緯
ステアリング構造図
熊本県警が重視しているのは、トヨタが96年3月以降、新たに製造したハイラックスには、改良されたリレーロッドを使い始めていることだ。
県警は、同社が96年までの原因調査で、欠陥を「保安基準に反する重要な故障があり、緊急の措置を要する」ことを示す社内基準「A」に位置づけていたと指摘する。
部品の幅を広げて強度を増した後には、欠陥の報告はないといい、「危険がなければ新車に改良した部品を使う必要はないでしょう」。県警幹部は捜査に自信を見せる。
県警が本格的な捜査を始めたのは、事故から約2カ月後の04年10月。トヨタが国土交通省にリコールを届け、事故と部品との関連について疑いが浮上してからだった。
05年8月に捜査本部を立ち上げ、同社を家宅捜索して資料を押収するなどした。同社は国交省に不具合が国内で11件と報告していたが、実際は国内に28件、国外でも52件あることが判明。県警幹部は「これも氷山の一角。実際はもっと多いはずだ」と懐疑的だ。
自動車の「欠陥」が原因の交通事故捜査は、熊本県警に実績もあった。
00年6月に熊本市の国道3号で起きた三菱自動車製「パジェロ」による人身事故を調べ、立件にこぎ着けた。一連のクレーム隠し事件が起きる中で、02年3月に同社幹部を業務上過失傷害容疑で書類送検した。県警幹部は、欠陥の重大性をこう説明した。「パジェロはブレーキ故障で止まれなくなる。ハイラックスは曲がれなくなる。いずれも車にとっては重大だ」。
■トヨタ「リコールは別の理由」
名古屋市のトヨタ自動車・企業広報室には報道機関からの問い合わせが相次いだ。この日は会見を開くようなこともなく、担当者が「リコールへの対応に落ち度はなかった」と繰り返した。予想外の事態は、欧州出張中の渡辺捷昭社長にもすぐに伝えられた。
トヨタ側の主張は、交通事故につながる危険性は認識しなかったというものだ。96年までに把握した不具合はいずれも、車庫入れ時などにハンドルを何度も左右に思い切り切った時に起こっており「通常の走行中では想定できない」ことから、そう判断したという。
その後、04年春になって、当時は想定していなかった走行中の不具合の報告があったため、調査の上、速やかにリコールの検討を始めたという。ただ、トヨタのリコール台数は01年が6万台だったが、02年46万台、04年には189万台。05年(188万台)は国内販売台数(171万台)を上回った。6月の株主総会後では、担当役員が「たくさんのリコールを出していることに心配をかけ、おわび申し上げたい」と陳謝した。
トヨタは6月末からは品質保証担当の副社長を初めて2人にする新体制を発足させた。うち1人は創業家出身の豊田章男氏を充てる異例の布陣を敷いた矢先の出来事だった。
ある幹部は「イメージダウンは避けられない。信頼回復には相当の努力が必要だ」と深刻な表情を浮かべた。
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〈キーワード:リコール(回収・無償修理)〉 欠陥車による事故を防ぐための道路運送車両法に基づく制度。設計や製造が原因で車両が保安基準に適合しないか、しない恐れがある場合、メーカーは国土交通省にあらかじめ届けて改善する。05年度は309件の届けがあった。
国交省によると、届けの判断はメーカーが不具合の発生頻度、安全への影響などを踏まえて行う。ただ、金属疲労など長期間かけて起こる不具合を予見するのは容易ではないという。
また、同一型式の車で事故が相次いだ場合などは国交相はメーカーに改善措置を勧告できる。従わない場合は命令も可能だ。
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200607120072.html