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2006年07月09日(日) 11時56分

国勢調査、郵送・ネットで 妨害処罰も検討 総務省方針朝日新聞

 回答拒否が急増するなど行き詰まりをみせている国勢調査について、総務省は制度を大幅に見直す方針を決めた。プライバシーに敏感な世相を考慮し、回答を手渡しで回収する方式を改め、郵送回収やインターネットでの電子申告に切り替える。マンション調査が難航していることから、強制力のある「実地調査権」を調査員に与えて管理人らに協力を求める方針だ。管理人が調査員を建物に入れないような行為には、調査妨害で刑事罰を適用する方向で検討している。

 制度の見直し案は有識者の懇談会(座長=竹内啓・東大名誉教授)で議論されている。同省は近く提出されるこうした案を踏まえ、2010年の次回調査で実行に移す考え。しかし、調査に強制的な手段を持ち出すことには異論も予想され、今後議論を呼びそうだ。

 国勢調査では、自治会推薦の人などが非常勤国家公務員として調査員に任命されている。各戸を回って調査票を配り、回収時に住民の面前で不備を確認するのが基本とされてきた。封筒に封入して回答することもできるが、住民側には「やり取りがおっくうだ」などの声がある。

 このため同省は、調査員の訪問は原則調査票の配布時だけとし、郵便受けへの投げ入れ配布でも良いことにする方針だ。回答は専用封筒で地元の自治体へ郵送してもらい、インターネットを通じた回答も認める。調査票配布時に知らせる世帯別の番号を打ち込むことで本人確認をすることが想定されている。

 昨年の国勢調査では約83万人の調査員が任命されたが、拒否や居留守の苦労が続き、「二度とやりたくない」との声が相次いだ。「訪問回収が無くなれば、調査員数が減らせる」と同省は踏む。

 質問内容にも批判があり、特に勤務先の記入を求められることに抵抗感が強い。本来は産業別就労人口の把握が目的であるため、産業の種類を列挙した選択式の設問に変えられないか検討する。

 統計法は国勢調査に応じない者に刑事罰(6カ月以下の懲役禁固または10万円以下の罰金)を定めている。だが、「調査は国民の理解と協力を基本とすべきだ」との考えから、適用事例はない。実際に適用させることについて有識者懇談会では慎重論が勝り、次回調査では見送られる見通しだ。

 その一方で、同じ罰則内容の「調査妨害」については、判断基準をつくった上で取り締まりを進める方向となった。

 マンションへの調査では、管理人が調査員を立ち入らせない事例が多く報告されている。同省は「全世帯への調査が不可能になり、個々人の回答拒否に比べて影響が大きい」とし、こうした行為を調査妨害に認定して摘発する考えだという。

 統計法上の「実地調査権」も初めて調査員に与える予定だ。総務大臣の承認を得た上で関係者に調査や協力を求めることができる権限で、管理人や管理会社に対し、オートロックの解除や補助的な調査として世帯人数を教えてもらうことなどが考えられている。拒否すれば罰則規定もあるが、摘発の適否は今後詰める。

     ◇

 〈キーワード:国勢調査〉 5年に1回、日本に住むすべての人を対象に実施する。1920(大正9)年に始まり、過去18回行われた。結果は議員定数や選挙区割りの決定、地方交付税の配分など様々に活用される。統計法で回答が義務づけられているが、05年調査では未提出世帯が約210万(4.4%)に上り、00年(約81万、1.7%)の2.6倍に急増。東京都の13.3%をはじめ大都市圏の多さが目立つ。同様の調査は各国で実施され、米国や韓国などではすでにネット回答が採用されている。

http://www.asahi.com/politics/update/0709/002.html