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声色を駆使してせりふを吹き込む小野さん。頭から布団をかぶれば、そこがスタジオだ=東京都千代田区で
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4月から6月半ばまで水曜深夜にテレビ朝日で放送されたアニメ「古墳ギャルのコフィー」の主人公は、なんと前方後円墳だ。ただし、甲高い声の早口でしゃべる女子高校生という設定。担任の先生はなぜか落ち武者だ。
脚本や作画から声優まで、映像クリエーターの小野亮さん(35)が、ほぼ一人で作り上げた。
昨春、自分のウェブサイトで公開すると、珍妙な設定とテンポよくたたみかけるギャグが話題になり、1日5万人が訪れる人気サイトになった。
放送を決めたテレ朝の西口なおみプロデューサーは「ネットの作品を見た同僚5人全員が笑いころげた。深夜番組でなくても十分通用する」と太鼓判を押す。
大量のセル画を使ってアニメを作る方式では30分の映像を作るのに千数百万円かかる。一方、小野さんのアニメは、自分で書いた原画をパソコンに取り込み、「フラッシュ」というCG技術で動かす。画質や動きの自然さは劣るものの、人手はほとんどいらない。
映画監督を目指していた小野さん。制作資金を集められず悩んでいた04年にCGアニメの手法を知った。テレビ放映に続いて、今秋にはDVD化される。発売元の映画会社は最低でも売り上げ10万枚を見込み、小野さん側に数千万円を支払った。6月からはTBSテレビ系列の「筑紫哲也NEWS23」で月1回、小野さん制作の時事問題アニメが放送されている。
ネット生まれでもう一つの有名作品が「スキージャンプ・ペア」。ジャンプにペア種目が追加されたという設定で、奇想天外なジャンプが続く。CG制作の専門学校生だった真島理一郎さん(33)の卒業制作作品が02年、ネットで爆発的な人気を呼んだ。大手レコード会社のエイベックスが目を付けて03年に発売したところ、シリーズ3作で計50万枚売れた。
たった一人で生んだヒット作。だが、ビジネスはそう甘くはない。小野さんは「ネットから飛び出したというより、食えないから飛び出さざるを得なかったと言った方が正しい」と打ち明ける。
ネットの視聴者から金を取るのは難しい。小野さんは、自分のサイトで公開した別の作品のDVDをネットで販売していたが、売れたのは過去2年で6000枚にとどまる。
実は「コフィー」のテレビ放映は、DVD販売に向けた宣伝が目的だった。小野さんはテレ朝から制作費を受け取るどころか、逆に数百万円の放映料を支払っている。
「スキージャンプ」も、エイベックスの協力でテレビ番組などで取り上げられたことで、DVD販売が急増した。
ネットでいくら人気を呼んでも、テレビの力を借りなければカネにならないという現実がある。
「ネットじゃ食えない。でもテレビ頼みじゃ食い物にされる。次の一手は映画です」。そう話すのは、小野さんの作品をテレ朝に売り込んだ映像企画会社「DLE」の椎木隆太社長(39)だ。今度は映画館でコフィーの劇場版を公開する交渉を進めている。
料金はロードショーより安い1000円程度に抑え、全額を映画館の取り分とする計画。映画化で話題を集め、DVDが売れればそろばんは合う。順調にいけば、来年初めにも全国20館程度で公開されるという。