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[三井住友海上]「保険会社の基本を忘れていた」
保険金を支払わないのでは、保険を売る資格がない。
金融庁が、損害保険大手の三井住友海上火災に対し、医療保険などについては無期限で、損害保険については2週間、販売を停止させる行政処分を下した。
昨秋、損保業界全体で問題になった保険金不払いの実態を、改めて調べたところ、三井住友海上の自動車保険の特約や医療保険で、不払いが新たに大量に見つかったためだ。
三井住友海上は昨秋、代車や見舞い費用などの特約に関する不払いが、2万7000件あったと、金融庁に報告した。だが、金融庁が調査漏れなどを指摘し、調べ直したところ、さらに1万7000件もの不払いが明らかになった。
5月に行政処分を受けた損害保険ジャパンでは、追加で見つかった不払いは1300件余りだった。異常な多さだ。
契約者に「保険金を受け取ると、後々保険料が高くなる」といったうその説明をして、受け取りを辞退させていた例も多く見つかった。医療保険では、本来、必要な医師の診断を省いて、社員の独断で保険金の支払いを拒否していた。
詐欺と変わらないと批判されても仕方ないほど、悪質だ。行政処分が、保険会社に対しては例のない重いものとなったのは、当然だ。
支払い漏れのチェック体制が整備されていない。契約者からの苦情や不払いの実態が経営陣に伝わる仕組みもない。保険金を確実に支払うという保険会社の基本が、ないがしろにされていた。
三井住友海上の植村社長は、「経営の仕組みが構築できていなかった」と、全社的な問題だったことを認めた。顧客の信頼を回復するには、業務体制すべてを根本的に見直すしかない。
厳しい競争の中で、必要な管理体制を整えないまま、収益優先で営業強化に走った結果が、契約者に不利益を与える不払い問題を生んだ。他の損保会社にも共通する背景だろう。
三井住友海上や損保業界に限った話ではない。金融界では昨秋以降、明治安田生命の保険金不払いや、三井住友銀行の金融商品の押し付け販売など、不適切な営業行為で、業務停止命令を受ける例が相次いでいる。
バブル崩壊後の危機的な状況を脱し、ようやく前向きの競争に臨む環境が整ってきた銀行や保険会社にとって、収益力の向上が大きな課題になっている。
しかし、利益追求に血道を上げるあまり、顧客を軽んじていないか。処分を受けていないところも、経営陣は今一度、自社の姿を見つめ直してほしい。