2006年06月22日(木) 10時03分
三井住友海上 契約者を軽視、利益追求優先を浮き彫り(毎日新聞)
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業務停止命令を受け謝罪する三井住友海上火災保険の(左から)井口武雄会長、植村裕之社長、江頭敏明次期社長、秦喜秋次期会長=東京都中央区の日銀クラブで21日午後7時3分、石井諭写す |
金融庁から前例のない厳しい処分を21日受けた三井住友海上火災保険は、契約者を軽視して利益追求を優先する経営体質を浮き彫りにした。特に「第3分野」として新規開拓に力を入れてきた「医療保険」で、契約者から請求された保険金を支払わなかったことは、保険会社の存在意義を自己否定したとも言える。今回の処分による業績への影響は「決して少なくない」(植村裕之社長)といい、信頼回復に向けた抜本的な経営体質の改善を迫られた格好だ。
「お客様の期待、信頼に応えることができなかった。深くおわび申し上げます」。植村社長と井口武雄会長、秦喜秋次期会長、江頭敏明次期社長の新旧経営トップが同日、会見で横に並び、そろって頭を下げた。
三井住友海上は01年10月、業界3位の三井海上火災と4位の住友海上火災の合併で誕生。旧2社間の競争意識が刺激となり、右肩上がりの好業績を達成し、「合併の優等生」といわれてきた。だが、好業績は主に効率化によるもの。違反行為は支払い部門に集中していたが、植村社長は「チェックする人員が減っていた」と効率化が誤った方向に向いていたことを認めた。
同社の販売代理店約5万9000店は7月10日から全店2週間の一部業務停止となる。昨年実績でこの期間の保険料収入約220億円が目減りする恐れがある。先に一部業務停止となった損保ジャパンの専属代理店がライバル社から切り崩しを受けたように、三井住友海上も同様の影響が予想される。
悪質な不払いが目立った医療保険は新規契約が無期限停止となった。「新しい柱として最も力を注いできた」(植村社長)だけに、業績への打撃は小さくない。本来は医師の判断が必要なのに、社員が独断で保険金の支払いを拒んだ案件は「実質的な詐欺ではないか」との指摘もある。植村社長は「社員の知識不足が要因。意図的ではない」と反論。不払い多発の原因も「医療保険を扱った経験が浅く、商品を作り、販売し、保険金を支払う仕組みが構築できていなかった」と述べ、法令順守意識の低さと内部管理体制の不備をあらわにした。
今後は、経営責任を明確にするため、役員の大幅な減俸を柱とする社内処分を実施する。金融庁に7月21日までに提出する業務改善計画に盛り込む方針だが、信頼回復に向けた取り組みは待ったなしの状況だ。【赤間清広】
(毎日新聞) - 6月22日10時3分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060622-00000002-maip-bus_all