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2006年06月16日(金) 12時16分

シ社エレベーター、低価格で公的施設に浸透 自治体困惑朝日新聞

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死亡事故を機に各自治体はエレベーターの緊急点検を進めるが、公営住宅の住民からは不安の声も上がる=大阪府吹田市で

 東京都港区で起きたシンドラー社製のエレベーターによる死亡事故をめぐり、自治体に困惑が広がっている。同社の国内シェアは1%程度とされるが、官公庁の入札では同業他社に比べて安値を提示して実績を伸ばしてきた。公的施設に限れば1割に達する自治体もある。公営住宅の住民からは不安の声が相次いでおり、これまで「税金を使う以上、安い方を選ぶのは当然」としてきた担当者らは戸惑いを隠さない。

 「シンドラーは説明責任を果たしていない。非常に残念」。大阪府の太田房江知事は、12日の記者会見で怒りをあらわにした。府営住宅など府関連施設にあるエレベーター1282基のうち、同社製は131基。シェアは国内大手メーカーに次いで10.2%に達する。

 府は6月末をめどに、府営住宅などのエレベーターの緊急点検を進めている。住民や利用者からは「シンドラーのエレベーターに乗るのは怖い」といった声が寄せられているが、「利便性を考えれば、安易に使用禁止にはできない」(担当者)という。

 公的施設で浸透した背景には、シンドラー社の低価格攻勢がある。府が04〜05年度に発注した府営住宅など23件のエレベーター工事の入札で、同社は4件を落札。うち3件は自治体が業者から安値の理由を聴き取る「低入札価格調査」の基準価格を下回り、残る1件も基準価格と同額の安値落札だった。

 大阪市の場合、市有施設約1900基のうち、シンドラー社製が164基。同社は98年から参入し、急速にシェアを伸ばした。他社との競争も激化しており、ここ1、2年は複数の入札参加業者が最低制限価格で札入れ。くじびきで決まる例も多かったという。担当者は「使用を中止すると住民も困る。積極的な点検、安全確認をして不安を一掃するしかない」。

 広島市では、市の管理施設にある498基のうち同社製は41基で、シェアは8.2%。「西区地域福祉センター」(5階建て)のエレベーターは都内の事故機と同型機で、使用停止が続く。車いすの高齢者が4階の社会福祉協議会を訪ねられないなど、市民生活への支障も出ているという。担当者は「エレベーターの発注方法を見直すかどうかは、死亡事故の原因が判明しなければ決められない」とこぼす。

 京都市では、同社が昨年から入札に参入。昨年12月と今年5月、市営住宅のエレベーターをそれぞれ1基落札した。だが、市は安全性が確認されるまで、いずれも着工を見送ることにした。

 神戸市によると、市内にある民間、公的施設をあわせたエレベーター計1万1885基のうち、118基が同社製。88年度に参入した同社のシェアは約1%だが、市関連施設だけでみれば約5%に膨らむ。

 各自治体の要綱では、刑事事件として立件されれば指名停止などの措置を取れるが、現段階ではできない。担当者からは「市民から安全性を不安視する声が寄せられているが、市の規定では現時点で処分はできない」(神戸市)と悩む声が上がっている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200606160027.html