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2006年06月08日(木) 01時49分

6月8日付・読売社説(2)読売新聞

 [ドミニカ移民]「外務省は率直に責任を認めては」

 外務省は率直に非を認めるべきではないか。

 約50年前、ドミニカ共和国で農業を営もうと、1300人余りの日本人が移住した。だが、彼らを迎えたのは、塩が噴き出し、岩だらけの不毛の地だった。日本政府が確約していた農地の所有権も与えられず、過酷な生活をしいられた。

 そんな移住者たちのうちの170人が国に対し賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は、国側の法的な責任を明確に認定した。

 「カリブ海の楽園」というふれ込みでドミニカへの移民を国策として推進しながら、十分な事前調査をせず、移住希望者らに正確な情報を提供していなかったという理由だ。

 判決はその上で、外務省と農林省(当時)の担当職員や両省の大臣には、「職務上の法的義務違反」があったと認定した。もっともな判断である。

 ただ、不法行為から20年経過すると賠償請求権が自動的に消滅するとの民事訴訟の規定を適用し、賠償請求は退けた。提訴が2000年から01年にかけてで、いかにも遅すぎたためだ。

 ドミニカ移民に関しては、00年末に外交文書が一般公開された。ずさんな事前調査や、移民条件をめぐる募集要項の誤った記載、移民実現に向けた外務省本省の性急な姿勢が、現地大使館との往復文書などから浮かび上がった。

 こうした実態が明らかになって、03年7月には、原告らの訴訟を支援する超党派の国会議員連盟が発足した。小泉首相も04年3月の参院予算委員会で、「外務省に多々反省するべきことがあった」と認めた。

 だが、外務省は「国は移住希望者に必要な支援・援助を行ったに過ぎない」と自らの責任を否定し、ドミニカ移民への積極的な関与を認めようとしなかった。今回の判決は、ドミニカ移民を「国の重要な施策」だったと明確に位置づけた。外務省の完敗である。

 判決について、麻生外相は「厳しい指摘があったことに十分留意」するとの談話を発表した。

 問題は具体的に何をするかだ。外務省はこれまでの批判を受けて、ドミニカ移住者のための交流センター建設などの支援策を打ち出しているが、辛酸をなめた移住者たちへの償いにはならない。

 小泉首相が国会で、「外務省の対応は、ほかの役所と比べるとなっていないという声はよく聞く」と苦言を呈したこともあった。

 ドミニカ移民の問題は半世紀も前のことだが、自らの過ちにふたをしようとする外務省の隠ぺい体質は、今も変わっていない。早急な脱皮が必要だ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060607ig91.htm