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■過ち
今回の不正手続きについて、社保庁本庁側は、地方組織である事務所、事務局単位で計画的に進められたとみている。その上、三重社会保険事務局などが、当初の本庁の調査に対し「適正に処理している」と、虚偽報告をしたことが事態を悪化させた、との認識だ。
本庁は、二十七、二十八の二日間にわたり、全事務局長に徹底した聞き取り調査を実施。村瀬清司長官は「もう、うそはダメだ」と、厳しい口調で事務局長に訓示した。
地方組織の隠ぺい体質に本庁側が厳格な態度をみせるのは、地方職員による年金個人情報の「のぞき見」問題など過去の不祥事の経験からだ。「のぞき見」の聞き取り調査でも、職員の多くが事実を申告せず、後日に本庁の調査で事実が発覚。そうした職員は厳しい処分を受けた。それだけに、本庁や与党の国会議員らからは「何度同じ過ちを犯せば気が済むのか」といった怒りが噴き出ている。
■痛手
一方で、社保庁本庁や村瀬長官の責任を重くみる動きもある。
二十四、二十六の両日に行われた衆院厚生労働委員会で野党側は、「(責任問題を地方の)事務局の話にとどめるのは、トカゲのシッポ切りだ」と批判。長官の辞任を強く求めた。
長官の責任が問われているのは、「行きすぎたノルマ主義が収納率の偽装につながった」(民主党・山井和則衆院議員)との点だ。
長官は、収納率を二〇〇七年度までに80%まで引き上げるため、事務局、事務所ごとに目標を設定。自ら文書などで「言い訳は無用」と目標達成を求め、半面で達成率上位の事務所などの表彰も行っていた。
地方組織の現役職員からは、「本庁からの収納率アップの指示がなければ不正な手続きなどするわけがない。手法も本庁が考えたのではないか」との投書が野党議員のもとに届いているという。
村瀬長官は〇四年七月、社保庁立て直しの“切り札”として、損保ジャパン副社長から起用された初の民間出身長官。二十九日夜の記者会見では、「進めている改革の方向は支持していただいている」と述べ、引責辞任を否定したが、期待が大きかった分、痛手も深い。
■争い
そもそも、本庁と地方組織の間で、責任論をめぐる醜い争いが起こるのはなぜだろうか。
社保庁には、幹部のキャリアと本庁職員を中心としたノンキャリア、地方採用職員という人事の「三層構造」があり、従来も互いの意思疎通の少なさが、不祥事を生む原因の一つとされてきた。
村瀬長官らは、こうした構造の解消を社保庁改革の重要テーマの一つに設定。地方と本庁側の人事交流の拡大などを打ち出してきたが、それらの組織改革もうまく進んでいないことが露呈した。
今回の不正では、現行の年金制度に問題があるとの指摘もある。給付を国民の保険料に頼る「社会保険方式」では未納問題はなくならない。民主党などはこの機に、かねて主張してきた、基礎年金(国民年金)を全額税で賄う「税方式」の導入を進めようとしている。
ただ今回の場合、制度が万全でなかったからそれを運営する役所の責任もない、ということには絶対にならないだろう。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060530/mng_____kakushin000.shtml