2006年05月28日(日) 03時02分
駐車違反取り締まり 来月から強化 物流困った 警察庁に緩和要請(産経新聞)
一部区間で禁止解除
道路交通法の改正で六月から駐車違反に対する取り締まりが強化されることを受け、運送業界が対応に苦慮している。各社とも集配車に助手をつけたり、トラックを使わず台車で運ぶなど当面の対策に躍起だが、業務が滞ったりコスト負担増の懸念も強い。厳格な取り締まりの適用で、物流に支障が出る恐れも指摘される中、業界の要請で警察庁も弾力的な運用に乗り出し、地域の実情に応じて規制を見直す動きが全国で広まってきた。(柿内公輔)
道路交通法の改正施行後は、民間の駐車監視員が車両を放置しているとみなせば、ごく短時間の駐車でも摘発の対象となる。日常的に貨物の積み降ろしを路上で行っている運送業者にとって、取り締まりの強化は死活問題。だが、効果的な対策はなく、各社とも“人海戦術”に頼らなければならないのが実情だ。
日本通運と佐川急便は、トラックを使わず集配拠点から台車を使って配送するシステムを一部地域で導入。「最も心配な繁華街」(日通)では、ドライバーのほかに助手を同乗させ、速やかに車を移動させる集配手法も拡大することにした。
ヤマト運輸は月ぎめ駐車場やコインパーキングの活用を進める。約五万五千社が加盟する全日本トラック協会(本部・東京)は今月、荷主関連団体に対して駐車場確保への協力などを文書で要請した。
ただ、人件費などのコスト負担増は各社とも必至。「スムーズな物流に支障が出かねない」(陸運大手幹部)との懸念も強まっている。
こうした中、トラック協会は昨秋、警察庁に対し、積み降ろしの多い区間で貨物車両を規制対象から外すよう要請。警察庁も物流に支障が出ないよう各県警へ指導を始めた。その結果、一部区間で駐車禁止を解除するなど規制緩和の動きが全国に広がってきた。
群馬県高崎市内では、JR高崎駅周辺部の商店街などを対象に、午前九時から同十一時まで「積み降ろしを行う業者が多く、配慮が必要」(群馬県警)として、規制対象から外した。
水戸市や福岡県の天神地区などでも、時間帯を指定するなどして貨物車両に対する駐車禁止区間の規制を緩和する取り組みもみられ始めた。
ただ、業界では「取り締まる駐車監視員に周知徹底されるのか」といった懸念が消えない。取り締まりの現場でトラブルが起きる可能性も指摘される中、実際の効果は「改正法施行後の具体的な運用状況をみるまで不透明」(国土交通省幹部)といえそうだ。
◇
■対応追われるコンビニ 配送車、駐車場所どう確保
コンビニエンスストア業界や外食業界も対応に追われている。
コンビニ業界にとっての悩みの種は、首都圏など都市部の店舗の多くが駐車場を併設していないことだ。セブン−イレブン・ジャパンやファミリーマートは全店の約二割、ローソンは約三割に駐車場がなく、「多くが各警察署が定めるガイドラインの重点取り締まり地域に入っている」(大手コンビニ幹部)。このため、商品を毎日運び込む配送車の駐車場所をどう確保するかが課題だ。
とはいえ、対応策といえば、店舗近くで時間貸し駐車場を探すなど限られている。駐車場がなければ何らかの代替策を取らざるを得ない。
このため、セブン−イレブンでは今月から一部の直営店で、店舗のそばに止めた配送車まで店員が商品を受け取りに行く実験を始めた。六月以降は対象を拡大する。
影響を受けるのは外食業界も同じ。だが、牛丼チェーンの吉野家ディー・アンド・シーは「違法駐車にならないよう配送スタッフに注意を促し、実態に合わせた対応策を考えていく」と当面は様子見の構え。総菜・持ち帰り弁当チェーンのオリジン東秀は、首都圏の駅前立地などで展開する「オリジン弁当」全店のうち九割以上に駐車場がなく、運送業界と同様、配送スタッフの二人態勢を検討。物流コストの増加は避けられない状況だ。(森田晶宏)
◇
【用語解説】駐車違反取り締まりの民間委託
6月1日施行の改正道路交通法で、違法駐車の確認や標章の取り付け作業が民間委託できるようになる。民間の駐車監視員はみなし公務員扱いで、講習と試験を受け、都道府県の公安委員会が認定する。全国270の警察署管内で74法人の監視員約1600人が活動を始める予定。
(産経新聞) - 5月28日3時2分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060528-00000013-san-bus_all