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2006年05月27日(土) 00時00分

老いも 若きも 脳トレ読売新聞

知育教育 右脳発達に効果
携帯ゲーム 物忘れ気になり
高齢者講座 介護予防が狙い

 「脳の活性化」がブームになっている。「あなたの脳年齢は70歳です」——。“脳を若返らせる”という触れ込みのゲームでこんな結果が出て、ショックを受けた人もいるのでは。書店には大人向けの計算や漢字の問題集が並び、ドリル機能付きの電卓や辞書といったグッズも人気を呼んでいる。


カード教材を使った知育教育(東京・世田谷で)

 東京・世田谷区の民間保育施設「ちびっこランド桜丘園」。保育士の水落和美さん(27)が、園児たちの前で「64、68、61……」と数字を読みながら、手に持った画用紙を次々にめくった。紙には数字と同じ数の赤丸のシールが張ってあるが、一瞬見ただけでは数え切れない。10枚を見せた後、水落さんが2枚を抜き出して「67はどっち?」と尋ねると、目の前にいた金子樹蘭ちゃん(5)が迷わず右を指した。「正解!」

 最近、各地の保育園などで使われているカード教材で、動物の名前や英語の曜日を書いたものもある。言葉とイメージを結び付け、右脳の発育を促すという。

 同園は2004年、保護者から「知育教育に力を入れて」と要望が相次ぎ、カードを教材に取り入れた。柳沢和夫園長(48)は、「子供たちの集中力は向上し、普段の遊びでも積極性が増した」と、その効果を認める。

 脳ブームの発端は、脳のメカニズムが解明され始めた1990年代半ばにさかのぼるという。日本福祉大の久保田競(きそう)教授(73)(認知神経科学)は、「脳を活性化させることが認知症などの予防につながるとの研究もあり、関心が高まった」と話す。養老孟司・東大名誉教授の著書「バカの壁」が、この流れを加速させ、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」のソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」でブームはピークに達した。

 昨春発売の同ソフトは、画面に出てくる数字を素早く覚えたり、足し算をしたりすると、「脳年齢」が表示される。続編を合わせ計約400万本が売れ、米国版も発売された。「DS」のソフトの主なユーザーは20歳代以下だが、このソフトは「最近、物忘れが多くなったなあ」と感じる中高年に受け、35歳以上の購入が3分の1以上を占めている。

 ここでの「脳年齢」は、ソフト開発時に20〜70歳代のモニター計120人から得た成績を基に作った数値で、“最高点”は20歳。ただ、慣れていないと、若い人でも60〜70歳という結果が出やすい。任天堂広報室は「繰り返せば脳の血流が良くなり、脳細胞が活性化する。でも、脳年齢と実際の年齢との差にあまり深刻になる必要はない」と言う。

 東京・三鷹市は今月、高齢者向け講座「脳にe!トレーニング」を始めた。パソコン画面上の小さなボールが、ふいに色や形を変えた瞬間、階段などで転倒しそうになった時をイメージし、足を一歩前に踏み出す訓練で、介護予防が狙いだ。ソフトの開発会社は、「頭が危険を察知すると同時に、体も反応する必要がある。脳と同時にストレッチや軽い運動などで体も鍛えることが大切」と言う。

 筋トレならぬ「脳トレ」という言葉まで生まれているが、専門家によると、物忘れを一生懸命思い出そうとしたり、散歩したりすることでも脳の機能は活性化する。日本医科大情報科学センターの河野貴美子助手(61)(脳生理学)は、「よく考え、悩み、人と会話する。それが本当に脳を鍛えるということです」と話している。

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