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富士山と太陽・月
昔は足で稼ぎ、今はパソコンで一発決定——写真家に人気が高い富士山の撮影ポイントや撮影時間の探索が時代とともに大きく変わっている。富士山と太陽の光の一瞬の妙を組み合わせた「ダイヤモンド富士」や、三日月と富士山を組み合わせた構図は、かつては場所や時間が特定できず、1カ月余も富士山周辺に通った写真家がいるほど。今はパソコンで簡単に撮影スポットや時間が分かる。昔を知るカメラマンは「当時の苦労が信じられない」と話すほどの変わりようだ。(洞口和夫)
念願へ34日費やす【24年前】
富士市石坂の写真家山口庸彰(つね・あき)さん(57)は、82年4月25日午前6時過ぎ、田貫湖畔で「2重ダイヤモンド富士」の撮影に成功した。
富士宮市内でカメラ店の店長をしていた頃、「春先、山梨県の七面山で富士山頂から日が昇り、ダイヤモンドのように輝くのを見た」という話を聞いた。「富士宮でも見られないか」と思ったのがきっかけだった。
定規で七面山と富士山を結んだ線の近くに田貫湖があった。「写真に撮ろう」。友人と3月22日から湖畔に通い始めた。午前4時に起き、当時は道がない所を30分以上歩いた。最初は山頂からほど遠い宝永山の右から太陽が昇った。
日に日に、太陽は山頂近くから上りはじめ、34日後に念願を果たした。逆さ富士が湖面に映り、「感激し、無我夢中でシャッターを切った」。写真は旧国鉄が「ディスカバージャパン」のポスターに使い、90年に香港国際写真大会の日本代表に選ばれた。山口さんは縦1・3メートル、横2メートルに引き延ばして富士宮市に寄贈、1階のロビーに飾られている。
その後、ダイヤモンド富士は4月と8月の、20日前後にあることがわかった。宿泊施設も生まれ、カメラを向ける写真家、旅行客が500人以上湖畔に並ぶ。
複雑な周期も加味【現在】
「次のダイヤモンド富士はいつか」「三日月が山頂の剣が峰にかかる瞬間はいつ、どの場所がいいのか」。富士宮市内野の「まかいの牧場」朝霧高原美術館で、全日本富士山写真連盟の会員がパソコンを操作、図をプリントアウトして説明する。
パソコンのデータは、富士山頂にかかる月の写真を撮り続けている愛知県豊橋市の林俊克さん(56)が山と天体を3次元で表示できるソフトと地図ソフトを使って作製した。
月は太陽と違い、同じ場所から出るのは19年後という複雑な周期があり、月の出の時間、場所を確定するのが難しかった。長年の勘を頼りに待つが、直前に誤差に気づく。30、40人が車で急いで移動するが、カメラの設定が間に合わず撮れないこともある。
林さんは「これでは危ない」と事前に場所や時間の割り出し方を探り、成功した。今では「ダイヤモンド富士」の撮影できる場所や時間のほか、この現象の直前に雲が虹のように見える「彩雲」が何分前に撮影できるかまで高い確率でわかる。
林さんは「これまでの写真家は『企業秘密』として、場所などは教えないが、多くの人にいい写真を撮って欲しいので、自身の体験を織り交ぜ、データをわかりやすいように工夫、公表している」と強調する。
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000000605250003