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■ダメージ■
橋本昌知事は焼却処分が終了する前日の先月二十日、記者会見で「すべてが終わったとは言えない。処理前の状態まで戻るには一年近くかかってしまう」と述べ、回復に時間がかかるとの見通しを示した。同時に、風評被害を懸念し、鶏卵の安全性を重ねて強調した。
県では、焼却処分の終了に合わせて「安全宣言」や「終息宣言」も検討したが、生産が回復していないことや海外で鳥インフルエンザが広がっていることなどから「終息宣言は出せるような状況ではない」(知事)と見送った。実際、一カ月経過しても、業者はダメージを引きずっている。
県内で感染が確認された養鶏場は計四十カ所。処分した鶏は約五百六十八万羽に上った。それまで都道府県別では全国トップの約千二百万羽弱いた採卵鶏の半数を処分した計算になる。
このため、昨年の卵の総生産量は前年比2%減の十七万二千トンに。十月以降だけをみると前年同月比10−15%減と大きく落ち込んだ。かろうじて首位は守ったが、二位の鹿児島県は一万トン差に迫る。県畜産課は「発覚直後は小規模の養鶏場が多く、昨年上半期の生産が好調だったため、被害は最小限に済んだ。影響が表面化するのはこれから」と危機感を募らせる。
業者が経営を再開するには、施設の消毒、検査などで四、五カ月は必要とされる。今月十一日現在、再開したのは約四割の十七カ所。資金繰りに行き詰まり、廃業を決めた業者も出ている。
昨年八月に約三万五千羽を処分し、年明けに飼育を再開した業者は「ピーク時の半分以下しか鶏を仕入れていないので生産量も少ないが、お得意さんを他県の業者に取られている」と嘆く。
■ワクチン?■
県は今月から、国の防疫指針を上回る基準での検査を、千羽以上を飼育する養鶏場約二百四十カ所を対象に始めた。指針では、養鶏場一カ所あたり十羽の血液を採取するよう求めているが、過去の検査で感染を見逃した反省から、一鶏舎につき十羽と検査数を増やしている。
ただ、感染経路が判明していないため、抜本的な予防策を講じるのは困難だ。
国の専門委員会は業者が違法な未承認ワクチンを使った可能性を示唆しているが、断定には至っていない。一部業者による検査妨害事件を端緒に、解明を狙った県警も立件できなかった。
県も「業者への調査はできるが、強制力がある捜査はできない」と話す。
人への感染については、国立感染症研究所が感染歴を調べる抗体検査で、業者や処分にかかわった県職員ら八十六人が陽性反応を示したと発表している。
これに対して県は、最も強い陽性反応を示した県職員は、処分作業の初日に採血し、それ以前は鶏と接触したことがほとんどないと反論している。
十九日からは独自検査を始め、養鶏場周辺の住民、養鶏場とは無関係の都市部の会社員ら計百人を対象に抗体検査を行っている。
担当者は「市販の抗ウイルス薬を服用したため抗体検査で陽性になった可能性もある。検査には約一カ月かかるが、冷静に見極めていきたい」と説明。感染ルートの解明が進まないだけでなく、検査のあり方も迷走している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060523/mng_____kakushin000.shtml