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愛媛県愛南町の真珠養殖販売業「キュート」が真珠のアクセサリーセットの購入を主婦らに持ちかけて投資を募り、配当金支払いを滞らせている問題で、県内でも200人以上が契約し、少なくとも約40人が「被害」を訴えていることが分かった。被害対策弁護団は出資法違反(出資金の受け入れの制限)容疑で、同社の刑事告訴を検討している。被害に苦しむ出資者の姿を追った。(神庭亮介)
「(お金が儲(もう)かる)いい話があるの」。福島市の主婦(53)が、知人の女性から、投資話を持ちかけられたのは、04年9月だった。
主婦は、次のような説明を受けたという。キュートと会員契約し、1セット100万円の真珠のアクセサリーセットを現金で一括購入すると、1年6カ月後に約120万円返金される。分割で支払う場合、毎月2万3500円のローンを返済しても、キュート側から月2万5千円が振り込まれる。1年6カ月後、投資に応じた配当金の残金が支払われる。
「真珠は、1年6カ月後に3〜5倍の値で売れる。その利益で配当できる」。知人女性の言葉に半信半疑だったが、「私は月40万円稼いだ」と通帳をみせられ、信じ込んだ。販売代理店「ミネバラ山梨」(甲府市)からアクセサリーのセットを購入し、信販会社とローン契約を結んだ。
会員を集めた食事会が月2回、市内のレストランなどで開かれ、毎回数十人が集まった。ミネバラ山梨の社長が「『子会員』を1人紹介すると5万円。『子会員』が『孫会員』を紹介すれば、さらに2万円の『お手間代』が親会員に入ります」と説明。「ただし、『お手間代』が出るのは『ひ孫』までなので、マルチ商法ではありません。キュートの社長は資産家なので安心です」と話したという。
主婦は古くからの会員の一人から、「3人勧誘すれば、無料で愛媛の養殖場を見学できる」と聞き、家族の名義を無断で使い、3人分の契約をした。実際に養殖場を見学してからは、さらに会員集めに熱中。「子会員」を増やし、多い月で30万円以上の「お手間代」が振り込まれた。
しかし、05年7月、キュートからの配当金の振り込みが止まった。同社社長が県内を訪れ、「投資仲間が亡くなってお金がまわらなくなった。10月には平常に戻るのでそれまで立て替えてほしい」と釈明したという。
主婦は自身を含めて4人分のローンを、毎月合わせて10万円近く支払わねばならなくなった。パートの収入や、今まで稼いだ「お手間代」で工面したが、2カ月で底をついた。返済が滞り、信販会社から1日数回、取り立ての電話がくるようになった。
同年10月、信販会社から夫や娘の勤め先にも電話が入り、家族に知られた。夫に責められ、娘は2カ月口を聞いてくれなかった。
子会員からの手紙も届いた。「卑怯(ひきょう)だ」「許せない」……。便箋(びんせん)は、非難の言葉で埋められていた。「知らないでやったことでも加害者と見られてしまう。申し訳ないです」。主婦は手紙を読み返す度、つらい思いでいっぱいになる。「人間関係は壊れ、信用もなくした。お金に目がくらんでしまった自分が情けないです」
ミネバラ山梨は、昨年9月に廃業した。元社長の女性は「マルチ商法という認識はなかった。(会員の)皆さんかわいそう。大変だなと思います。私も被害者。キュートの社長には責任をとって欲しい」と話す。
キュートの代理人を務める木村敢弁護士は「代理店の一部が(マルチ商法を)行っていた可能性はある」としている。
県弁護士会は昨年12月に被害対策弁護団を結成し、会員約40人の相談に応じてきた。弁護団では、金融業としての届け出なく出資金を受け入れたなどとして、出資法違反容疑でキュートを告訴する方針。菅野昭弘弁護団長は「詐欺容疑では犯意の立証が難しいので出資法違反容疑で告訴を考えているが、本質は詐欺事件」とする。
信販会社が会員を相手取り、立て替え金の支払いを求める訴訟を地裁に起こしているため、弁護団では「信販会社が加盟店の審査義務をきちんと果たしていたか疑問」として、契約の取り消しを求めている。
これとは別に、アクセサリーセットを一括購入した会員の一部は、キュート社長とミネバラ山梨社長を詐欺容疑で告訴することを検討している。2セットを購入した、福島市の主婦(55)は「お金が戻らないなら、せめて罪を償って欲しい」と話している。
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000000605210002