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先月21日、犯行時少年であった3人に対して福島地裁で無期懲役の言い渡しをしたことが大きく報じられた。01年から改正少年法が施行されて、刑事裁判を受ける可能性がある年齢が16歳から14歳以上に引き下げられた。特に、犯行時14歳以上の少年が故意に被害者を死亡させたときは、「原則的に」家庭裁判所から検察官に送致され刑事裁判を受けることになった。といっても、少年が無期懲役の判決を受けることなど、最新の統計が手に入る04年までの5年間に8人にすぎず、一度に3人というのは衝撃的である。
本件は、殺人ではなく強盗致死である。判決によると、出会い系サイトで別々に呼び出した3人の男性に暴行を加え、合計250万円を超える金品を奪った。被害者の1人は金属製バールなどで殴打され、全身打撲、肝臓破裂及び肋骨骨折などで死亡したのである。
自らのストレスのはけ口にしているのか、金品を強取する以上に屈辱を与えて服従させることを面白がり、残虐な暴行はエスカレートしていった。「共犯者との付和雷同」や「少年特有の未熟さ」ではかたづけられないもので、刑事裁判により厳しく処断されるべきものであろう。
殺人が、犯情によっては懲役刑も選べるのに対して、金品強奪を目的とした強盗致死罪の法定刑は「死刑又は無期懲役」しかない。少年法には、犯行時18歳未満であれば無期懲役を有期の懲役に緩和することができるとの規定はあるが、本件の加害者は18歳以上でありそれもできない。事案の内容から、特に法定刑を酌量減軽する事情が見いだせなかったという判決は、大方の者がうなずけるのではないか。
だが、少年に刑事裁判を受けさせることの問題も少なくない。一つは、家庭裁判所では原則的に4週間以内で審判が終わるのに対して、刑事裁判では何カ月も、控訴・上告すれば何年もかかることが多いからである。「鉄は熱いうちに打て」ではないが、加害者の矯正処遇のタイミングを逸することになる。
もう一つは、09年度から始まる一般市民が刑事裁判に参与する裁判員制度に関連する。17歳の少女が母親に劇物のタリウムを飲ませた殺人未遂事件があったが、このような背景に複雑な事情のある事件でも、刑事裁判となって裁判官3人と裁判員6人に加えてマスコミなど衆人環視のもとで裁かれる可能性がある。少年の未来を断ち切るリスクの高い、あまりに異様な光景と思わざるを得ない。
ところで、冒頭で16歳以上の少年による殺人や強盗致死などは「原則的に」刑事裁判を受けると述べた。しかし、この5年間に対象となった310人の中で現実に検察官送致された者は61.3%、強盗致死では71.7%、殺人では57.1%である。
少年による殺人の場合、嬰児殺や少年の精神状態に問題があるもの、親族間で起きたものが多い。このような事件は、刑務所で単に懲役に服させるより、家庭裁判所で少年院送致などにして少年の更生に配慮した教育を行うことが望ましいとの判断である。殺人以外も含め、家庭裁判所が、事案の内容を吟味して「例外的な」運用をしている点を高く評価したい。(福島大学大学院教授/生島浩)
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000150605200002