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2006年05月11日(木) 01時49分

5月11日付・読売社説(2)読売新聞

 [経済ヤクザ]「暴力団の浸透を阻止しなければ」

 経済活動に触手を伸ばし、巧妙に資金稼ぎをする暴力団の動きが活発化している。これも、その実態を示す事件だ。

 神戸市に本拠を置く暴力団山口組系の後藤組組長や、東証2部上場の不動産会社「菱和ライフクリエイト」の社長が警視庁に逮捕された。東京・新宿駅近くの12階建ての雑居ビルを不当に乗っ取ろうとして、虚偽の所有権移転登記をした疑いである。

 これを突破口に、後藤組を中心とした山口組の、東京での活動実態を徹底解明すべきだ。いわゆる「経済ヤクザ」の違法行為を摘発し、資金源を封じ込める捜査とする必要がある。

 このビルをめぐっては、別の暴力団組長らが3年前、不正に転売したとして逮捕されるなど、登記上の名義が目まぐるしく変わった。最終的に、後藤組が実質支配する「フロント企業」に名義が移ったように装っていた。

 後藤組のフロント企業が不当介入した経緯や、上場企業の社長が後藤組と関係を持った背景の解明が欠かせない。

 ビルの管理会社の顧問が3月、路上で刺殺される事件も発生した。ビルの乗っ取りとの関連が指摘されている。実行犯や首謀者の逮捕にも全力を挙げなければならない。

 後藤組は「武闘派」としても知られ、1992年には経済ヤクザの実態を描いた映画監督の伊丹十三さんを襲撃する事件も起こしている。90年代前半、山口組の東京進出の先兵ともなった。

 暴力団全体の組員と準構成員は8万人台半ばで推移しているが、山口組は増加の一途で、昨年末に4万人を超えた。山口組への一極集中が進んでいる。暴力団の活動を封じるためには、まず山口組の増殖を抑え込むことが課題だ。

 民事介入暴力の阻止などを目的に暴力団対策法が92年に施行されて以後、暴力団の組織実態を隠す動きが、ますます巧妙になっている。

 経済活動の足場として設立したフロント企業を通じて、金融業や不動産業など様々な事業活動に進出し、暴力的威嚇を背景に不当な利益を上げている。

 暴力団と関係を持ちながら不法行為を繰り返したり、活動を助けたりする準構成員も増加している。組員の組織からの仮装離脱も目立つ。暴力団の活動が表面上は見えにくくなり、企業や住民の防衛策も難しくなってきた。

 警察は、フロント企業や準構成員の動きなど、暴力団に関する具体的な情報を外部に積極的に提供していくことも必要ではないか。暴力団排除の取り組みを社会全体で高めることにもつながる。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060510ig91.htm