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2006年04月27日(木) 00時00分

今年になって急増のウィニー被害——“真犯人”は個人情報保護法?読売新聞


ウィニーの画面に表示された流出ファイルの一覧。「アンティニー」はウィニー関連のウイルスの総称であり、その1つが「仁義なきキンタマ」だ

 ファイル交換ソフト、「ウィニー」による情報漏洩は昨日今日の話ではない。数年前から著作権無視の映像ファイル、個人情報、機密情報など多種多様なデータが流出していた。今年になっての大騒動にデータ流出の実態を知る関係者から「なぜ今ごろ?」といぶかる声が出ている。問題の本質はどこにあるのか。

04年にファイル流出が本格化

 ウィニーによる情報漏洩が大問題になったのを受け、政府はウィニー使用の中止を呼びかけるなど、官民を挙げた取り組みは始まったばかりといえる。だが、いったん流出したデータは回収のしようがない。最も効果的な対策は、パソコンにウィニーをインストールしないか、削除するしかない。そこで、注目を浴びているのが対策ソフトだ。

 セキュリティー対策ソフトメーカー、トレンドマイクロが4月5日に発売した企業向けソフト「ウイルスバスターコーポレートエディション アドバンス」の新版には、ウィニーの発見・削除機能を他社に先駆け初めて組み込んだ。押っ取り刀で開発を間に合わせたと思いきや、昨年夏から発売準備を進めていたという。

 「(ウィニーによる)情報漏洩事件は約2年前から続発していたため、企業ユーザーから対策ソフトを切望されていました」と開発理由を語る同社プロダクトマーケティングマネージャーの岡野健人さん。

 海上自衛隊のマル秘データ、岡山、愛媛県警の捜査資料を始めとした機密情報の流出はマスコミにセンセーショナルに取り上げられ、今年になってウィニー被害が急増したような印象を受ける。

 しかし、東大大学院助手(当時)の金子勇氏がウィニーの無料配布を開始したのは2002年5月。その後ウィニーを利用して、勝手にファイルをばらまいてしまうコンピューターウイルス「アンティニー」が発見されたのは03年8月。つまり、今をさかのぼる2年以上前からアダルト系の映像ファイルに交じり、病院患者のカルテ、企業の職員・顧客名簿などが流出し始め、04年には本格的なファイル流出時代に突入していたのだ。

 セキュリティー対策ソフトメーカー、マカフィーのSE本部長、加藤義宏さんは「アンティニーの亜種(特徴が似た別種)が今年になって急激に増え、ファイル流出も増えたという報告は聞いていません」と語る。

企業の意識に変化が

 ネット犯罪問題に詳しいテクニカルライターの三上洋さんは、「情報流出の被害は以前から続いていたものの、流出源である企業などの意識が変わってきたのです」と指摘する。

 情報漏洩にこれまで、ほおかぶりをしていた企業が、落ち度を認めすぐに謝罪する姿勢をとるようになったというのだ。対応の遅れで被害が広がれば、対策を怠ったとして告発される恐れがある。むしろ、流出の事実をいち早く認めて公表し、信用失墜などのダメージを最小限に抑えた方が得策と判断し始めたのだ。

 では何がその動きを後押したのか? 複数の関係者が異口同音に指摘するのが、昨年4月に施行された個人情報保護法の影響だ。トレンドマイクロPRスペシャリストの冨安玲さんは、「個人情報の流出で企業の責任が問われるようになったため、法律の施行前から危機感を持った企業から対策についての相談を受けるようになりました」と語る。

 しかし、企業の危機意識が高まっても被害が減るかは疑問だ。問題が大きくなることで、ウィニー利用者が増える皮肉な悪循環に陥っているからだ。さらには、いまだにウイルス対策ソフトを使用してないパソコンは全使用台数の15%(トレンドマイクロ調べ)にも上り、「被害の9割は対策ソフトをきちんと使っていればブロックできたはず」(マカフィー・加藤さん)だからだ。

 結局、「ウィニーは情報流出のルートに過ぎない」(三上さん)わけで、最後は利用者のセキュリティー意識が問われているのだ。(林 宗治/2006年4月24日発売「YOMIURI PC」6月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060427nt06.htm