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建設業界で建築基準法は、いわば“憲法”のようなものだ。その第一条には、こう記されている。
「最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資する」
あらためて条文を読むと、昨秋に明るみに出た耐震偽装事件が、いかに法律の目的を逸脱しているかが分かるはずだ。
何しろ、姉歯秀次元建築士の行った耐震強度計算では、「最低の基準」を下回る偽装物件が、全国で約百棟にのぼることが判明している。
震度5強の地震で崩壊する恐れがある建物が数々あるというのだから、「生命」や「財産」を守るという条文は、踏みにじられたと言って過言でなかろう。
民間検査機関のチェック機能が働かず、でたらめな耐震計算がたやすくまかり通ったこと自体が問題だが、偽装に走らせた動機にも深刻な問題が潜んでいる。
「鉄筋量を減らすよう相当、プレッシャーをかけられた」「他の設計事務所に代えると言われ、仕事がなくなると生活に困るので応じた」…。姉歯元建築士は国会の証人喚問など公の場で、偽装に手を染めた胸の内をそう吐露している。
「圧力」をかけたとされるのが、木村建設だ。国会で同社元東京支店長は、「法を犯すことは全く認識していない」と否定しつつも、他の建築事務所に代えると言ったことについては認めた。お互いの会話の背景には、「コスト優先」という考え方があったと推察できる。
姉歯元建築士による構造計算で、木村建設は数多くのマンションやホテルを建設している。コスト優先で安全を置き去りにしたのが事実ならば、そこにモラルはない。
同社は粉飾された虚偽の財務内容を国土交通省に届け出たとして、建設業法違反の疑いが持たれている。警視庁など合同捜査本部には、他にも不正がないか、洗いざらい徹底的に捜査してもらいたい。
われわれは地震国に住んでいる。それだけに「住」の安全神話が崩れたことは深刻な意味を持つ。誰もが氷山の一角の事件だと感じたはずだ。政府は建築士への罰則強化や構造計算書のダブルチェックなどを盛り込んだ建築関連法案を国会に提案している。胸を張って「耐震元年」と言える立法や施策が望まれよう。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060418/col_____sha_____003.shtml