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「良さそうだったので契約前に二千五百万円の入居一時金を払ってしまった。娘と相談して考え直し、解約しようと思ったが応じてもらえない」「入居三週間で病気になった夫が、入院のため退去し、転院先で死亡した。戻ってきた一時金は、思った額より少なかった」。昨年、東京都消費生活総合センターに寄せられた相談の一例だ。
先月初めには国民生活センターが、〇五年夏に全国千五百三十の有料老人ホームを対象に行った調査結果を発表した。料金やサービス内容などを記載した重要事項説明書を作成していない施設が16%、退去時の介護一時金を返還しない施設が15%あるなどの問題が浮き彫りになった。同センターでは「クーリングオフのような制度が整っていないのはおかしい。利用者の権利をもっと守るべきだ」としている。
実は、四月から施行された改正介護保険法・老人福祉法では、ホーム利用者の保護について一定の前進が見られた。
例えば、ホームに対して一時金の一部保全が義務づけられ、その償却期間についても契約後九十日以内に退去した場合は全額返還(入居日数に応じた実費分は自己負担)するよう指導される。
施設のパンフレットなどでしか調べられなかったサービスの内容などを新たに共通の書式で記載し、公表を義務づけた。また、都道府県が施設運営の内容を調査員にチェックさせ、公表するよう定めた(すべての施設について都道府県のホームページなどで確認できるようになるのは〇六年度後半の見通し)。
NPO法人シニアライフ情報センターの池田敏史子(としこ)事務局長は「比較可能なデータが公表されるのは、利用者にとって大切な一歩」と評価する。ただし、「難解な部分もあり、専門家の助言を仰ぐ必要もあるだろう。情報の入手には、家族の協力が必要なのでは」と指摘する。
全国有料老人ホーム協会(二百六十施設加盟)では、「施設の責任者に対する研修を行ったり、必要な場合には施設に指導・助言したりなど、利用者保護を心がけている」という。
国民生活センターでは、今回の調査に合わせて「有料老人ホーム選びの注意点」をまとめた。
費用の面では、介護保険がどこまで適用されるか、一時金はどんな目的に使われるか、施設やサービスの内容では、部屋の広さや緊急通報装置の有無、他の入居者との人間関係や職員の応対など、細かな点まで事前のチェックを、と呼びかけている。
◆ホーム選びのチェックポイント
(1)居室は個室か。介護を受ける場所はどこか
(2)一時金は何のために払うか。返還されるか
(3)入居率や退去者数を比較する
(4)夜間の介護・看護職員数を確認する
(5)倒産の心配がないか経営状況をみる
(6)サービス費用を個別に確認する
(7)重要事項説明書と契約書は事前に入手する
(8)体験入居して部屋や設備を確かめる
(9)いまは不要でも介護現場をみておく
(10)成年後見制度を利用する
(国民生活センターの報告書から)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060406/ftu_____kur_____000.shtml