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2006年04月05日(水) 00時00分

見せびらかしたい。それがVAIO読売新聞

 AVに特化し、とがったデザインでリッチなライフスタイルを提案してきたソニーのパソコン「VAIO」。今年の春モデルでも、ワンセグチューナーなどをいち早く搭載するなど、時代を先取りしている。10周年を迎えるブランドを育て上げたトップに話を聞いた。

—— VAIOは常に先端を目指してきたように思えます。本質はどこにあるのですか。

石田 米国では無料のデスクトップPCや499ドルのノート型PCが出ていますが、ソニーにはそうする必要はない。メーカーとして量産は必要なので、平均価格帯の商品は出します。しかし、そこでも他社と違う「ソニーらしさ」を大切にしたい。ハード、デザイン、搭載するソフトやアプリケーションでの違いを訴求したいのです。


石田 佳久  いしだ・よしひさ
ソニー VAIO事業部門 部門長
 1959年、大阪出身。慶応大工学部卒後、82年にソニー入社。インフォメーションテクノロジーカンパニーなどを経て、2003年からVAIO・オブ・アメリカのプレジデント。05年4月から現職。

 もう一つは、設計者のこだわりです。買った物や使っている物を人に見せびらかしたい。そういう気持ちを、最近は「プライド・オブ・オーナーシップ」と言っていますが、そう思われるような商品にしたい。

 技術的に差別化が難しくなったといわれるパソコンにも、可能な領域は残っています。たとえば、モバイルノート型の「typeT」です。カーボンという素材を使うことで、液晶モニターを従来の半分の薄さにしました。ちょっとしたアイデアと工夫で、他社と全く違うものができあがります。ワンセグのチューナー搭載も、どこよりも先にやる。うちにはそういう技術があります。

—— VAIOは、ユーザーにライフスタイルも提案をしてきましたね。

石田 春モデルの「typeX リビング」は、居間で音や絵を楽しめます。ある人との会話が開発に結びつきました。この人の家には、チューナー付きのパソコンが6台あり、テレビ番組を録画しては地下室のサーバーにためているというのです。

 話をきいて、面白いなと思いました。番組を蓄積するには記憶装置が大きくないといけません。それを形にしたのが、最初の「typeX」です。それを進化させ、リビングルームに置き、液晶やモニターにつなぐわずらわしさなしにエンタテインメントを楽しめるようにしたのが「typeX リビング」です。

—— ご自宅でもAVの装置に凝っているのですか。

石田 趣味がAVというわけではないが、好きなのですよ。パソコンが5台あり、そのうち2台は電源を入れっぱなし。リビングには、42インチの「BRAVIA」、DVDレコーダー「スゴ録」、VHSとベータのビデオレコーダー、8ミリビデオがあり、ケーブルテレビはセットトップボックスとつながっています。

 2階の書斎や子供部屋など、どこにいてもコンテンツが見られます。家の環境を考えたりするうちにアイデアが出てくるのです。自宅もDVDレコーダーのネット接続が完全な環境ではないから、そんな問題を簡単に解決できないかといつも考えています。

—— 家の中のどこにいても自由にコンテンツを楽しめるという「デジタルホーム」にどう対応していきますか。

石田 デジタルホームというと、ややこしくなりますが、平均的な家庭に何があるかを想像してください。テレビ、DVDレコーダーにパソコン、週末はお父さんがノートPCを持ち帰るかもしれません。そこに必要な物は何かということを考えると、欲しい物が見えてきます。

 音楽を全部パソコンに取りこんでいるユーザーなら、家のどこでもワイヤレスで聴きたいでしょう。外出が多い人なら、携帯プレーヤーで持ち出せる方法を提供する。ハンディカムコーダーの映像をDVDに焼きたいなら、そこで新たな商品を提案できます。そういう総合的な話で考えると、デジタルホームの実体が見えてきます。

—— パソコンとデジタル家電の融合について、どう進展していくと予測していますか。

石田 それがわかっていたら、大金持ちになっています。色々なものがあって、何か1つに集約されることはないでしょう。パソコン1台でほとんどのことができるようになっても、ホームシアターやDVDプレイヤーを買う人がいる。

 ソニーのパソコンしか買わない、というわけではないでしょうから、ほかの製品と親和性を持たせるのが大切です。もっと先の話をすると、コンテンツはすべてネット上にあって、ブラウザーだけあれば見られる。究極はそこにいくでしょう。あまり早くそういう時代になると我々の仕事がなくなってしまいますが……。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20060404nt09.htm