2006年04月01日(土) 10時38分
個人情報保護法1年、識者から「法改正必要」の指摘も(読売新聞)
個人情報保護法が全面施行されて1日で丸1年。
法制定にかかわった国会議員や政府の検討部会などの委員を務めた識者らに、読売新聞がアンケート調査したところ、回答者の多くが、相次ぐ過剰反応や公益情報の非開示を懸念し、運用見直しだけでなく法改正の必要性を感じていた。
■過剰反応に直面
回答者(38人)の中には、自ら過剰反応を体験した人もいた。国民新党の亀井久興衆院議員は、「海外出張先から予定と違う飛行機で帰国した時、当初予定していた便に搭乗しているか秘書が航空会社に聞いたが、個人情報保護を理由に回答を拒否された」。民主党の高橋千秋、内藤正光両参院議員も、「友人やその身内の葬儀について葬祭業者に問い合わせたところ、拒まれた」という。
総務省の研究会委員だった八木欣之介・慶応大名誉教授は、「教え子と連絡を取ろうと勤務先の人事課に所属部署を尋ねたが、回答拒否。『適切』な対応かもしれないが……」と、複雑な思いをにじませた。
■出し渋る公務員情報
幹部公務員らの学歴や生年月日などを出し渋る中央省庁が相次いでいることに、回答者の8割近い30人が「幹部は公人として一定の情報は開示されるべきだ」とした。
取材に対し、公明党の漆原良夫衆院議員は「法の悪用で、情報開示のレベルは統一すべきだ」と指摘。民主党の枝野幸男衆院議員は、人事院の最高幹部である人事官(3人)の場合、同じ大学の同学部の出身者が同時期に務められないと法律で定められている例を挙げ、「幹部公務員の学歴は公益情報ということ。学閥などがないかどうかを監視する意味で、公開が当然だ」と省庁の対応を批判した。
■「運用適正」はゼロ
回答者のうち、「保護法の運用は適正」としたのはゼロ。混乱や不適切な運用が、「一部」または「かなりある」が30人、「そもそも法に欠陥がある」が5人だった。
必要な対策(複数回答)については、「法の趣旨や必要な情報提供への理解を求める啓発」「明確な解釈指針」が各16人、「実態調査」「省庁の指針見直し」が各14人だった。
33人は何らかの法改正が必要と指摘。「行政機関個人情報保護法に、情報の有効利用、公益情報提供についての規定を盛り込む」「公益情報を共有可能にするため、個人情報の保護の範囲などを見直す」は、いずれもその半数を超えた。
過剰反応や不適切な運用の原因では、「個人情報を悪用した犯罪など治安悪化を背景に、住所や氏名も明かしたくないという意識が広がっている」が24人と最多。国や自治体のPRや研修不足で、「法の趣旨が理解されていない」が22人、「法や条例の適用範囲や解釈に混乱がある」が18人に上った。
(読売新聞) - 4月1日10時38分更新
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