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2006年03月26日(日) 10時33分

HIV訴訟 原告の1割が「死にたい」 深刻さ浮き彫り毎日新聞

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薬害エイズ裁判和解10周年記念集会に駆けつけた川田龍平さん=都内のホテルで25日午後4時8分、小林努写す    非加熱血液製剤で感染したHIV(エイズウイルス)訴訟の原告の48%が現在も「2、3年先について考えられない」と思い、約1割が「死んでしまいたい、死んでもいい」と強く感じていることが、支援組織などの実態調査で分かった。何気ない会話やマスコミ報道に偏見や差別感、不安感を感じている人も48%に上る。HIV訴訟が和解して10年を経た現在も被害の深刻さが改めて浮き彫りになった。
 支援組織「はばたき福祉事業団」と大阪HIV訴訟原告団、研究者らが昨年9月、原告の被害患者652人に調査票を送付し、今年1月末現在、256人が回答。平均年齢は38.2歳で、性別は男性244人、女性9人、無回答3人。今年10月に報告書にまとめる予定。
 調査によると、「死んでしまいたい、死んでもいい」と感じている人が「少し感じる」を合わせて37%に上った。
 HIVによる症状をおおむねコントロールしているとみられる人も多いが、9割近くがHCV(C型肝炎ウイルス)にも感染。うち「慢性肝炎」が55%、「肝硬変」が10%で、重複感染の深刻さがうかがえる。医療体制への要望では8割超が「HCVへの対応充実」や「血友病への対応」を求めていた。また、ここ1年間で「血友病やHIV感染症であることから、受診を断られた経験」のある人が3人(内科2人、皮膚科1人)もおり、いまだに医療機関に残る差別の実態が明らかになった。
 経済状況をみると、就労率は57%で、今後の経済的不安が「大いにある」は49%だった。現在、配偶者や恋人などパートナーがいる人は49%。今まで一度もいないという人は全体で25%、20歳代では35%、30歳代では30%に上る。子どもは「ほしいが、あきらめた」とする人も29%に上った。理由は「相手へのHIV感染のリスクがあるから」が88%を占めた。【玉木達也】
 ◇「人命より利益…改めない限り、薬害終わらない」
 「今日まで自分が生きてこられるとは思っていなかった。人命より利益を大切にする考え方を社会が改めない限り、薬害は終わらない」。25日、東京で開かれた「薬害エイズ裁判和解10周年記念集会」で川田龍平さん(30)は語った。実名を公表し、被害者の先頭に立ち続けてきた。この日は、非常勤講師を務める松本大がある長野県から駆けつけ、原告団や支援者らと旧交を温めた。
 川田さんの脳裏には、常に10人の仲間がいる。病院の壁の向こうでうめき声を上げ、親族にさえ病名が伏せられたまま逝った仲間たちのことだ。
 95年7月、仲間を訪ねると、病室に医師が集まっていた。「アーアー」とうめき声が聞こえ、見舞いをあきらめた。息を引き取ったのは約1時間後。19歳だった川田さんは、日記にこう書いた。
 <許せない>
 節目のたびに開かれる記者会見でいつも「仲間が次々と殺された」と語るのはそのためだ。「声を上げなければ、存在ごと消し去られる。語り続けなければならない」
 96年3月29日の和解調印式。川田さんは国や製薬企業に「あなた方が積極的・主体的に真相究明をすること。僕たちが生きるための保障をすること。心から反省し謝罪をすること。本当に実行するかどうか、一つ一つ見続けたい」と訴えた。
 あれから10年。薬害を生む構造は何一つ変わっていないと感じる。研究費や研究機材を製薬企業に丸抱えされた大学、族議員への献金……。患者と向き合う医師が現れてきたことも知っているが、ヤコブ病、肝炎、イレッサと薬害は後を絶たない。
 約束だった真相究明も不十分に映る。「特に82〜83年の事実関係が確定していない。どんな証拠があるのかさえ、被害者には分からない。ハンセン病のように国がきちんと検証をしないからだ」
 毎週のように小学校や中学校などを訪ね、エイズや差別について語り続けている。95年3月6日の実名公表からちょうど11年にあたる今月6日も、東京都内で講演した。「責任をあいまいにし続けるこの国とは何なんだろう。あと何年、生きられるか分からないが、二度と薬害が起こらないよう、できることをできるうちにやりたい」【小林直、夫彰子】
(毎日新聞) - 3月26日10時33分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060326-00000001-maip-soci