2006年03月08日(水) 02時52分
過酷取り立てで3人心中 ヤミ金業者逮捕 出資法違反容疑(産経新聞)
平成十五年六月、大阪府八尾市の夫婦ら三人がヤミ金融の取り立てを苦に心中した事件で、大阪府警などの合同捜査本部は七日、出資法違反(高金利)の疑いで、ヤミ金業者メンバーで飲食店経営、和佐野寛容疑者(31)=東京都中野区=ら六人を逮捕・再逮捕した。
過酷な取り立てによる夫婦の心中に端を発し、ヤミ金融への罰則強化につながった事件は、時効の五月を目前に実行犯逮捕までこぎ着けた。捜査本部は今後、恐喝容疑も視野に追及する方針。
また、捜査本部はこれらのグループを含む全国組織のトップとみられる亀井浩次容疑者(39)を別の貸金業法違反事件で指名手配し、幹部とみられる原広勝容疑者(33)ら二人を逮捕。八尾市の事件への関与も調べる。
亀井容疑者らの組織について、捜査本部は約二百の返済用口座に延べ約二千人から三億円以上の入金があったことを確認。押収資料の分析などと合わせ、十二年以降に約五十億円の利益を上げたとみている。
調べでは、和佐野容疑者らは十五年四月から六月にかけ、清掃員の夫(61)と兄(81)とともに心中した八尾市の無職女性(69)=いずれも当時=らに対し、計約七万円を貸し付け、法定の約百三十−二百七十倍にあたる利息約三十万円を受け取った疑い。同年六月、八尾市の踏切に女性ら三人が飛び込み、JR関西線の電車にはねられ即死した。女性は三万円の借金に対し、約二十万円を払ったが完済とされず、脅迫的な取り立てに苦しむ思いを遺書に残していた。
亀井容疑者らは今年一月ごろから、那覇市内のマンションでヤミ金を営業。捜査本部は二月、出資法違反容疑などで家宅捜索し、計二十四人を一斉に逮捕した。八尾市の事件で使われた振込先の口座から、東京都内のヤミ金業者、川畑将容疑者(25)が現金を引き出したことが判明しており、捜査本部は指名手配して行方を追っている。
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≪遺書燃やし区切り 隣人ら「成仏を」≫
悪質なヤミ金融が社会問題化した心中事件から約二年九カ月、大阪府警などの合同捜査本部は七日、大阪府八尾市の無職女性(69)ら三人を死に追いやったヤミ金業者を逮捕した。「安らかに成仏して」。現場の踏切には執拗(しつよう)な嫌がらせ電話を連日受けた隣人らが姿を見せ、三人の冥福を祈った。
夫婦は自殺前、八尾署に三回相談していた。同署はヤミ金業者に警告したが、取り立ては厳しくなるばかり。近所の住民にも「お前が払え」と嫌がらせの電話がくるようになった。
同じアパートに住んでいた山下彰子さん(69)はヤミ金業者逮捕の報を受け、一通の手紙を空き缶で燃やした。「区切りをつけたかった。でも、どうしても思いだしてしまう」。山下さんは顔を覆って涙を流した。
事件当日の朝、ニュースで悲報を知った直後に郵便で届いた遺書。「死ぬ以外ない。借りていたお金すべてを返せないけれど許してください」。亡くなった女性が前日に郵送したものだった。
女性の次兄(81)は事件の約二カ月前に窮状を打ち明けられた。自分の葬儀に備え、ためていた百万円を渡すと、「これで助かる」と安堵(あんど)した女性の顔が忘れられない。その後、親族三人を一度に失った。「苦しみ抜いたあげく死を選びました」。女性の遺書が残されていた。
「犠牲になるのは妹たちだけで十分。こういうことは一切やめてくれと言いたい」。兄は近く、夫婦の墓前に容疑者逮捕を報告するつもりだ。
(産経新聞) - 3月8日2時52分更新
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