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「ちょっとピンぼけ」で取り扱いは不便、失敗も少なくないという、デジタル時代に逆行するようなカメラが人気を呼んでいる。ロシアや中国製で、少々おもちゃっぽいことから「トイカメラ」と呼ばれるレトロな写真機だ。ファンの中心は、写真というとケータイで撮るのが普通となっている20〜30代の人たちだ。
東京・南青山にあるトイカメラ専門店「ロモグラフィー・ジャパン」で、ロシア製のトイカメラ「ロモ」を手に取ってみた。
本体がプラスチックで出来ているため、思いのほか軽く、「カメラを構える」という気負いも感じさせない。一見すると使い切りカメラのようだが、フィルムを交換して繰り返し使える立派なカメラだ。
だがプラスチック製レンズのものが多く、ガラス製レンズに比べてシャープさに欠け、仕上がりは少々ピンぼけ気味だ。レンズの光の透過性も劣るため、写真の四隅がぼんやりと暗くなったりする。
工業製品としての完成度が必ずしも高くないため、ストロボが光らなかったり、シャッターを押したはずなのに写真が撮れていなかったりする“ご愛嬌(あいきょう)”もたびたびだ。
だが、このファジーさが逆に不思議な魅力を生み出している。
対象の形や色をシャープに再現する日本製の高性能カメラとは違い、画像はちょっとぼやけてソフトな感じ。撮りようによっては、イラストのような写真が出来上がる。
ロモグラフィー・ジャパンの店内は、ロモで撮ったスナップ写真が何十枚も壁に張られている。デジタル写真のように加工したわけでもないのに、画像はどこか味わい深い。たくさんの写真が集まって、それ自体が1枚の絵のようだ。
ロモ愛好家でグループ展などを開く笹尾達也さん(36)は、「写真が出来上がるまでに手間がかかる面倒さがいい」と話す。笹尾さんからロモを借りてファンになったという中山享子さん(37)も、「何気なく撮っただけなのに、不思議な絵のような写真が出来上がってびっくり。すぐに、はまっちゃいました」。撮ってすぐに結果がわかるデジカメと違い、苦労して出来上がったプリントを見る瞬間が一番楽しいという。
トイカメラ約30種を扱う会社「パワーショベル」(東京・渋谷)が描くファン像は、「おしゃれ、アートが好きな20代の女の子」。2000年ごろから静かなブームを呼び、今では洋服店、雑貨店、レコード店などでも販売されて、売り上げを毎年伸ばしている。
値段は、ロモが機種や性能によって4000円から3万円程度。中国製の「ホルガ」は4000円〜2万円程度だ。ソ連時代のロモは珍重され、ネットオークションでは数万円の値段が付けられている。
トイカメラが若者を引きつける理由について、写真家のテラウチマサトさんは、「自由な発想を持つ若い人たちは、写真の撮り方など細かいルールに縛られないところに魅力を感じている。見た目のかわいらしさも大きな要素」と話す。
にわかにフィルム熱ニコンが一部機種を除くフィルムカメラ事業の大幅縮小方針を発表し、コニカミノルタホールディングスがカメラと写真フィルム事業からの全面撤退を決めるなど、デジタルカメラに押されて退潮が目立つフィルムカメラ。だがここに来て、にわかに「フィルム熱」が高まっている。
ビックカメラのカメラ専門館(東京・池袋)によると、1月にニコンなどが事業縮小を発表して以降、夕方になるとフィルムカメラやアクセサリー品を買いあさるサラリーマンで混雑し、1月中に人気商品は姿を消してしまったという。
中古カメラ店にも、フィルムカメラを探し求める人が殺到。フジヤカメラ店(東京・中野)によると、慌ててニコンの人気機種を確保する人が増え、相場も上昇気味。またレモン社(東京・銀座)では、ライカなど高級品の売り上げも伸びているという。
若者の間のフィルム人気も目立つ。読者の6割が20代という写真雑誌「PHaT PHOTO」(テラウチマサト編集長)が主宰する写真教室には、約300人が在籍しているが、フィルムカメラを選ぶ生徒がほとんどだという。
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