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眼鏡はガリ勉、ネクラっぽい——という発想は昔のこと。最近は視力に関係なく、アクセサリー感覚で身に着ける若者が目立つ。安く、早く手に入る店も増え、実用品から「個性の証し」に変わってきた。
東京・神宮前の眼鏡店「Zoff」表参道店。コーヒーショップもある店内で、若者たちがカラフルな眼鏡を物色していた。
「私、かなり似合ってない?」と鏡に向かっておどける女子高生。友達は「こっちもかわいいよ」と、色違いの眼鏡を手渡す。
店内に並ぶのは約1200種類、値段は5250円から9450円。月に2回は新作が出る。視力測定し、レンズの在庫があれば30分で仕上がる。
同店を経営する「インターメスティック」の上野剛史・事業運営部長(33)によると、全国31店舗の1月の売上高は前年同月比13%増という。
黒、紺、青の3色が交じったフレームを買った埼玉県所沢市の高校3年、山本卓真さん(18)。ほかにも灰色、赤、青と白のツートンの3種類を服装や気分で使い分けている。
この日買った新品は「ワイシャツなど、カチッとした服の時に使うつもり」。ところがレンズに度は入っていない。「度入りレンズは厚いので。これはコンタクトレンズの上からかけます」とさらりと言った。
「どーもー」。寄席の舞台に登場した漫談家の寒空はだかさん(41)。黒いセルの眼鏡が光る。ギターを弾くしぐさと口三味線で歌いだした。
♪タワー、タワー、東京タワーに昇ったわー、チャカスッチャン……。眼鏡のまじめそうな顔ととぼけた歌詞のギャップが受ける。
この眼鏡も縁だけ。レンズ付きだと目が小さく見えて「顔全体のバランスが悪くなる」からだ。眼鏡は20本ほど持つ。「眼鏡には思い入れがあります。気に入った商品は店にレンズを外してもらいます」という。
くるり、「ASIAN KUNG—FU GENERATION」、おぎやはぎ、南海キャンディーズの「山ちゃん」ら、個性的な眼鏡で人気を上げたミュージシャンや芸能人は多い。
「メガネ男子」という本が昨年9月に出版された。読者層は「眼鏡の男性が好き」という女性らだ。
表紙は黒縁眼鏡の若い男性。芸能人ら120人の視力やメガネ歴をまとめた「メガネ男子名鑑」や、「メガネ男子ランキング」も。
「メガネ男子のしぐさの好き嫌い」も紹介され、好きなのは「両手で覆うように眼鏡を上げる」「キスの時には外す」、嫌いなのは「レンズがベタベタ」「頭の上に乗せる」——。
本は3万5000部売れた。出版元「アスペクト」の関景介さん(39)は「インターネットの存在も大きい」。同社のホームページのアクセス数は1日約8万件だったが、本の出版時は40万〜50万件に達した。ネットで「メガネ男子愛好会」を運営する女性(27)は「製造技術が上がっておしゃれで安い眼鏡が増え、芸能人が使うことで人気が広がった」とみる。「眼鏡で演出される知性や素顔との二面性に、恋心と尊敬の念が刺激されるのです」
コンサルタント会社「サクスィード」によると、全国の眼鏡販売額は4年連続で下がった後、2004年に前年比5・9%増の約5459億円と回復。05年もほぼ横ばいと復調している。
ただ、目の専門家には「おしゃれ先行」を不安視する声もある。東京医科歯科大の所敬・名誉教授は「度が入っていないレンズでも光が散乱したり、ゆがんで見えたりし、眼精疲労の原因になることがある。きちんと検眼し、慎重に選んで」とクギを刺している。
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この記事は眼鏡をかけた記者3人が担当しました。
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