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東京都内の会社員Aさん(58)は、文字を書くときだけ手がしびれるという奇病・書痙(しょけい)の治療で、二年前から医師にかかっている。
これまで、しびれを抑える薬など四種類を、朝昼晩と寝る前の一日四回のんできた。先日の診断で、うち一種類の量が半分(一日二回)に減った。「薬の量が減ったので当然、費用も安くなると思ったのですが…」
ところが、その月の自己負担(三割)は前月の三千五百八十円から百八十円増えて三千七百六十円になった。
調剤薬局へ問い合わせても「保険の仕組み上、問題ない」とのこと。「今まで通りもらって、うち一種類を半分捨てた方が安いということですか」と尋ねると、「そういうことになります」。「捨てた方が得」という仕組みに、Aさんは納得がいかない。
そもそも、医師が処方し、調剤薬局で受け取る薬の代金は、薬剤だけの値段ではない。薬局の運営費としての「調剤基本料」、調剤する薬剤師の労力に対し支払われる「調剤料」、そして誤使用を防ぐための情報提供やのみあわせに関する指導代としての「指導管理料」などが含まれる。
日本薬剤師会医薬保険課の小林寧(やすし)さんに協力してもらい、Aさんのケースを点検してみた。
薬局は同じ所なので、薬局規模により異なる基本料は変わらない。指導管理料も一般に常に計上されるもので関係ない。変化したのは調剤料だ。
「調剤料の計算では、のみ方の違いや投薬日数により『技術料』が異なってきます」と小林さん。
Aさんののみ方はこれまで「四種類を一日四回」だった。今回、一種類が一日二回になったことで、全体ののみ方は「(1)四種類を一日二回(2)三種類を一日二回」という形になり、二通りに増えた−として調剤料も増えたのだ。「減った薬は単価が低かったため、薬の減額分より調剤料の付加分が上回り、負担が増えたわけです」
「国の政策的思惑や病院側の訴えなどが絡み、診療報酬のあり方は実に複雑。特に薬は分かりづらく、患者への説明に困ることが多い」と話すのは、名古屋市内で薬局を営む五十川亘さん。薬剤師の有志で医薬制度研究会をつくり、患者に優しい制度のあり方などを検討している。
「よく問題になるのは、薬局を変えたら値段が高くなるケース」という。これは、調剤基本料が薬局の処方せん受付数によって異なるためで、医薬分業をすすめる上で国が設定している。
「医薬分業は大切。だが、訪れた薬局によって薬代が違うという設定は患者には分かりづらい。もっと簡素化すべきだ」と五十川さんは訴える。
現在、二年ごとの診療報酬改定作業のまっただ中。患者への分かりやすさが視点の一つだ。このほど、厚生労働省がまとめた案では、Aさんのようなケースを引き起こす仕組みの見直しは見送られた。ただし、調剤基本料の区分を現在の三から二へ、調剤料も長期投薬で用いる内服薬の評価を引き下げ、区分も簡素化することなどが挙がっている。
五十川さんは「患者の疑問にしっかりこたえてくれる、かかりつけ薬局を探して」と語った。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060216/ftu_____kur_____001.shtml