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名古屋市の無職Aさん(63)は二〇〇三年六月に鉄骨造三階建ての建売住宅を約三千七百万円で購入。異常に気づいたのは、地震発生時だった。横揺れがひどく、シャンデリアが激しく揺れ、食器がガタガタ音をたてた。震度3クラスかと思ったら、実際には周辺の震度は1弱程度だった。
欠陥住宅問題に詳しい建築士らが調査したところ、柱が異常に細い、溶接が不十分、基礎部分が薄くて鉄筋の量が少ない−などの構造上の欠陥があった。販売した会社は建築基準法で定められた構造計算をしていなかったという。今回、依頼を受けてAさん宅の構造計算をした長沼利三・一級建築士は「震度5弱で倒壊する可能性が高い」と結論づけた。
「鉄骨造の建物は本来頑丈だが、構造に欠陥があると、逆にもろくなってしまう」と長沼さんは警告する。Aさんは「初めて新築の家を買って喜んでいたのに、腹が立つ。もし大地震が来たらと思うと、安心して眠れない」と話す。補修程度では問題解決できず、二月に業者を相手に建て替え費用などを求める損害賠償の訴えを起こす考えだ。
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本来、建築基準法では、地震や風圧などに耐えられる安全性を確保するため、木造の三階建て以上の建物や、鉄骨造をはじめ木造以外の二階建て以上の建物などは、所定の構造計算をすることが義務付けられている。
だが、NPO法人「欠陥住宅をつくらない住宅設計者の会」(名古屋市)や、長沼さんも加わる「欠陥住宅被害東海ネット」(同)によると、鉄骨造や木造三階建ての住宅で構造計算が行われていないケースが多い。
なぜか−。両会の建築士たちは「建築確認申請のときに、建築主が構造計算書や構造図の提出を省略できる制度があるから」と指摘する。
愛知県や名古屋市は一九七二年から、二級建築士も設計できる小規模の建物を一級建築士が設計する場合などに省略できるとの規則を定めた。木造以外の二階建てでは、高さ十三メートル以下、軒高九メートル以下、延べ床面積が三十平方メートル超三百平方メートル以下が対象だ。五九年ごろに緩和された建築基準法施行規則に基づく規則で、いくつかの県や市で類似の制度がある。
住宅販売会社や施工業者らはこうした制度を悪用し、構造計算さえせずに経費を浮かせたり、材料を減らして利益を上げる意図があるようだ。両会によると、建築士も含め、建築関係者の中には、構造計算自体が不要だと勘違いしている人もいるという。
耐震強度偽装事件をきっかけに愛知県は四月から、建築確認制度を改正する。省略項目を削り、原則として構造計算書などの添付を義務付ける。マンションだけでなく、戸建て住宅でも建築関係者の不正を防ぐ狙いだ。
■工事契約前に建築士に相談
構造に問題がある住宅を買わないようにするにはどうすればいいのか。
長沼建築士は「工事契約の前に構造計算書や構造図を取り寄せ、詳しい建築士に相談を」とアドバイスする。施工業者や住宅販売会社と利害関係のない設計事務所と監理契約を結ぶのも有効だ。建売住宅なら、基礎や構造部分の工事途中の写真を販売会社に見せてもらうのも一つの手段。
住宅設計者の会副理事長の片山繁行一級建築士は「どんな制度も万全ではない。消費者が賢くなることが大切。構造計算書の提示などをしてくれない業者は警戒した方がいい」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060126/ftu_____kur_____000.shtml