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自動販売機というと、まず思い浮かべるのはたばこや飲料だが、最近では熱々おでんやにぎりずしが自販機で買えるようになった。さらに、ごみを少なくする環境配慮型や、地震時などに活躍する災害救援型、おしゃべりをする対話型の自販機も現れ、機能面の進化が続いているようだ。
今や東京・秋葉原の名物となっているのが、「おでん缶」の自販機だ。200円(牛スジ入りは250円)を投入すると、熱々のおでんが詰まった太めの缶が転がり出てくる。
1985年、名古屋市の「天狗缶詰」が開発。立ち飲みの居酒屋などで細々と売っていたが、95年、電気街の一角に自販機を置いたところ、なぜか“アキバ族”の間で大ブレーク。年間1000万円を売り上げ、テレビで「日本一売れる自販機」と紹介された。昨年は、秋葉原を舞台にしたテレビドラマ「電車男」にも登場。列島を寒波が襲った12月は自販機2台で販売数約1万4000缶の月間記録を作った。
天狗缶詰企画課の伊藤堅一次長(44)は「おでん缶は温めると変質しやすく、品質管理が難しい。回転の速い秋葉原にぴたりとはまった」と話す。
甘エビやマグロ、ホタテなどのにぎりずし1人前8貫を500円で購入できるのが、東京と徳島、北九州を結ぶオーシャン東九フェリー(本社・東京)の「冷凍寿司自販機」だ。
シャリは温かく、ネタは冷ためになるよう、専用電子レンジで解凍する。乗船時に無料で配られるフードカードで購入できることもあり、繁忙期には一航海で120食を完売する。
町中に自販機を置いても人気が出そうな気がするが、製造元のサン・デリカ(東京都千代田区)は「飲食店のない船内という特殊な条件だから成り立つ商品」と話し、当面はフェリー内限定にとどまるようだ。
災害時は飲料無料 登下校の「防犯役」 機能ますます便利に日本自動販売機工業会によると、国内の自販機は券売機なども含めて約550万台。飲料は約260万台に上る。米国に次ぐ自販機大国で、数の上ではもはや飽和状態だが、最近は「社会貢献」をキーワードに機能が多様化している。
昨年11月、東京・霞が関の経済産業省別館に登場したのは、「マイカップ自販機」。持参したカップでジュースやコーヒーを買い、紙カップのごみが減らせる。同省リサイクル推進課では、省内の実験で効果が出れば、企業などへ設置を働きかける方針だ。
日本コカ・コーラは2003年から、災害時に遠隔操作により、飲料を無料サービスする自販機を導入した。すでに全国で約1000台が設置されており、新潟県中越地震では、長岡市役所の自販機が水やお茶の提供に活用された。
子どもたちを守るため、通学路沿いの自販機に防犯カメラや緊急ブザーを付ける試みも始まった。未成年が酒を買えなくするよう、免許証などによる年齢識別機能付きの自販機への切り替えも進んでいる。たばこ自販機でも、成人だけに発行されるICカードによる識別システムが08年から導入される。
単なる機械を超え、利用者とコミュニケーションを図る自販機も現れた。ダイドードリンコは00年から、「こんにちは」「いってらっしゃい」などとあいさつする飲料自販機を導入。関西弁で「すんません。今釣り銭切らしてますねん」と話す自販機もあり、今年の正月三が日には「おおきに! 今年もよろしゅう!」とあいさつした。
実用段階には至っていないが、富士電機リテイルシステムズが開発した化粧品の「コスメ自販機」は、対話型モニターやカメラを装備。口紅をつけた自分の顔を画面上で想定し、アドバイスを受けられる。将来は、利用者の好みや体調に合わせて料理を出す自販機が現れる可能性もあると、自販機工業会などは予測している。
「自動販売機の文化史」を著したジャーナリストの鷲巣(わしず)力(つとむ)さん(61)は、「今後はますます、欲しい物が欲しい時に、欲しい場所で手に入るようになるだろう。ただ、これは捨てたい物をどこにでも捨てる精神につながりかねない。自販機は生活を便利にするが、我々の生活習慣を破壊する一面もあることを心にとめるべきだ」と話す。
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