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和服で街を歩くのは、歌舞伎役者か落語家、銀座のクラブのママさんぐらいというのは昔のこと。最近はふだん着として袖を通す人が増えてきた。人気の秘密は、洋服では味わえない非日常的な気分やドキドキ感。アンティーク着物の登場で、値段もぐっと手ごろになっている。クリスマスイブの今宵(こよい)、和の魅力について探ってみる。
23日昼、東京・恵比寿のウェスティンホテル。入り口に高さ3メートル以上のクリスマスツリーが飾られ、ジングルベルが流れる会場で、和服姿の男女が高々とシャンパンのグラスを掲げた。
「全体が白っぽ過ぎるかなと思ったが、クリスマスなので明るくしました」「皆さんの着こなしを勉強させてもらいたい」——。20〜70歳代の参加者が順番に壇上に立ち、自分の装いを説明する。赤や緑を基調にしたコーディネートをしたり、サンタクロースの刺しゅうが入った帯を締めたりする人もいた。
若い人と年配の人の会話も弾む。「帯を直して」という女性に、母親ぐらいの年代の人が手を貸す。「つながりは『着物が好き』ということだけ。しきたりにこだわらず、自由に着ています」と、この「きもので出かける会 クリスマスパーティー」の呼びかけ人で着物リサイクルショップを営む五箇谷(ごかや)桂子さん(48)は話す。5年前に7人でスタートしたが、この日は約80人でテーブルを囲んだ。
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アンティークなら1万円以下も多くの人が、和服ブームの立役者と認めるのが、大正ロマンの漂うアンティーク着物だ。
原宿などにアンティーク着物ショップが登場したのは3年ほど前。人目を引く派手な柄、個性的で自由な着こなし。しかも、新品ならひとそろい15万円はするのに、1万円以下もザラとあって、たちまち若者をとりこにした。
「帯や小物をどうしようかな、と考えるだけでもウキウキする」。都内の会社員田中綾子さん(30)も、ふだんから着物でお茶やショッピングを楽しむ。急いで歩けないし、すその乱れも気になるから、振る舞いがゆったり、優雅になるという思いがけない効用もあったという。
電車でつり革につかまる時も、手を添えてたもとを隠すようになり背筋も伸びた。「和服だと視線を浴びやすくなるから余計に気を使うのかも。まるで『やまとなでしこ養成ギプス』ですね」と笑う。
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お気に入りの着物で、街に出てみたい。そんなニーズをかなえるイベントの仕掛け人たちも増えてきた。
毎月第2土曜の午後3時、銀座4丁目の交差点前に和服で集合し、“銀ブラ”する「きものde銀座」。着物姿であれば申し込みも不要。今月も100人を超す和服集団が歩行者天国を練り歩いた。世話人の一人の西脇龍二さん(48)は「インターネットの力も大きい。1人で和装するのには尻込みしていた人たちが、ネット上の告知を見て集まるようになった」と話す。
西脇さんは昨年から「きもの日和」と銘打ったイベントも始めた。11月3日の文化の日に、ファッションショーや和服でのバンド演奏などが催され、今年は着物姿の1500人が一堂に会した。
2002年春に創刊された「KIMONO姫」(祥伝社)編集長の田辺真由美さん(35)は、最近のブームを「入り口がアンティーク着物だった人たちが進化している。サイズが合わなかったり、古かったりして、シンプルでかわいらしい現代の着物に目を向けるようになり、幅が広がってきた」と分析する。初心者には「家庭で洗える木綿やウールの商品もあるし、呉服店に行かなくてもネットで見ることもできます」とアドバイスする。
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着物姿で足もとはブーツ。年配の人から見ると目を覆いたくなるような帯の結び方がないわけでもないが、京都工芸染匠協同組合の担当者は「どんな結び方をしていても『よろしいなあ』と思います。着物全体の振興が図れるのではないでしょうか」と、形にはこだわらない。
クリスマスが終われば年末年始。アンティークならば、買ったその場で持ち帰りも可能だというから、新年は着物にチャレンジしてみては……。
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