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2005年12月21日(水) 00時00分

“組織的詐欺”立件焦点に 耐震強度偽装事件 東京新聞

 住まいへの信頼を足元から揺るがした耐震強度偽装事件は、警視庁と千葉、神奈川両県警の合同捜査本部が二十日、建築基準法違反容疑で強制捜査に乗り出したことで、新たな局面を迎えた。家宅捜索に動員されたのは異例の約五百三十人。刑事告発された姉歯秀次元一級建築士(48)による構造計算書の偽造に、マンションやホテルの施工会社、設計会社、コンサルタント会社は関与していたのか。捜査当局の本格的な事件解明が始まった。 

  (社会部・鷲野史彦)

 捜査当局の動きは素早かった。国土交通省が先月十七日、耐震強度の偽装問題を公表してから一カ月余。建築基準法違反容疑での姉歯氏の告発からほぼ半月というスピードで、強制捜査に着手した。捜索先は告発された東京都内のマンションとホテルの計四物件の関係業者にとどまらず、姉歯氏の事情聴取などを根拠に、首都圏と九州の関係百カ所以上に上った。

 姉歯氏との直接の取引はないにもかかわらず、ホテルの低コスト工法を指導してきたコンサルタント会社「総合経営研究所」(総研)の関連先の捜索には百人以上が投入された。「罰則が最高でも罰金五十万円の建築基準法違反容疑での立件だけでは、国民は納得しない」と警察幹部は言う。

 姉歯氏は「(事件の)全体像を見る限り、(偽装は)私一人でできることではない」と国会の証人喚問で証言した。捜査当局はこの姉歯証言の裏付けを目指すように、さまざまな関係業者が複雑に絡んだ詐欺容疑でも捜査を進める構えだ。

 「押収資料が何万点になるか分からない。分析に一カ月以上はかかるだろうが、国民は待ってくれるのか」。捜査は時間との闘いも強いられる。

   ■   ■

 複雑な事件の構図の解明に向けて、捜査幹部は「建築主や設計業者、姉歯氏らを貫く大きな縦軸として、建築基準法の適用を検討している。しかし、これはあくまで捜査の突破口だ」と明かす。マンション購入者と直接やり取りをする建築主を建築基準法違反に問える見通しが立てば、購入者を被害者とする詐欺容疑での立件の“芽”が出てくるというのだ。

 姉歯氏は、偽装物件を数多く手掛けた木村建設の篠塚明・元東京支店長(45)から「通常八十−百キロの鉄筋量を、六十キロに減らせとか、具体的な数字を提示されたことがある。篠塚氏には(法令違反の)認識があったと思う」と証言。そして、篠塚氏の背後には、マンション建築主「ヒューザー」の低い単価設定があったと指摘した。

 ホテル建設では、総研の幹部が木村建設の子会社「平成設計」に、鉄筋量の削減を求めていたことも分かっている。

 関係業者が軒並み低コスト化を目指す中で「鉄筋量をこれ以上減らせば耐震強度は保てない」と認識していることが証明できれば、建築基準法違反に加えて組織的詐欺事件に発展する。捜査幹部は「告発物件だけではなく、すべての偽装物件を捜査対象としてとらえている。縦軸として設定した建築基準法を姉歯氏以外に適用するのが難しければ、あらゆる法令を駆使して真相に迫りたい」と力を込めた。

   ■   ■

 一方、建築行政に対する信頼回復を探ろうと、国交省は建築基準法の罰則強化を含む建築確認制度の見直し論議を始めている。「なぜ偽装行為が始まり、見逃されてきたのか」。事件解明の“原点”をおろそかにしては、抜本的な見直しは進まない。捜査当局による究明は緒に就いたばかりだ。

 偽装物件について姉歯氏は当初、「二十一件だけ」と説明した。だが国交省によると、姉歯氏が関与した耐震強度不足の建物は二十日現在、十七都府県で七十八物件に上り、食い違いは日々拡大。そのため“第二の姉歯”の存在さえ取りざたされている。

 欠陥住宅被害者の救済に取り組む欠陥住宅関東ネット事務局長の谷合周三弁護士は「なぜ偽装物件の建築確認が下り、売却されたのか。時間をかけてでも責任の所在と原因を明確にし、今後の法制度の在り方につなげなければならない」と、徹底捜査を求めている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20051221/mng_____kakushin000.shtml