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「このマンションに住み続けたいと思っていたが、残念だ。改修補強の道はあるのか。〇・五六の数字をより(耐震基準値の)一に近くするのに、どこまで可能性があるのか」。非公開で開かれた今月三日の川口市と民間確認検査会社「日本ERI」(東京都港区)の住民説明会。住民の男性はこう訴え、日本ERIに耐震診断を踏まえた補強改修プランの提示を求めた。
市の対策本部長を務める加藤善太郎助役は「耐震補強で一に近いものになれば、住民の意向に合致する。市が建築の専門家を派遣し、住民の相談に応じながら次の作業に進みたい」と話す。市は補強を前提とし、補強工事費の一部を補助する独自支援策を七日に発表した。
そもそも国が示した支援の基準の耐震強度〇・五未満の意味は何か。建築基準法が求める耐震強度一以上は、これを満たせば、震度6強から7の地震でも倒壊の恐れがないことを表す数値とされる。一方、約半分の強度となる〇・五の数値は、自治体が住民に退去命令を出す場合の目安として、先月末に国土交通省の対策連絡協議会が示したものだ。
構造計算書の再計算をして耐震強度を〇・五六と判定した日本ERIは、説明会の席で「梁(はり)のコンクリートの一部にひびは入るが、柱が残るのでただちに倒れることはない」と明言している。同社は「この数字はあくまで建物の一部分の最小値なので…」(経営企画部)と補足説明するが、「建物は弱い部分から崩れる」との指摘もある。
一方で建築主の「ヒューザー」(東京都千代田区)は独自の検査で、耐震強度は〇・七五と日本ERIとは大きく食い違う数値を示した。
困惑するのは住民側だ。どちらの数値が建物の強度の実態を表しているのか不透明となり、男性住民は「事実はどうなっているのか。正しい数字を知りたい」と訴える。
川口市建築審査課は「どちらにしても耐震不足」と話す。国交省建築審査課も「〇・五はあくまで『著しい危険がある』とみて、行政が強制措置をとるかどうかを判断する目安の値。基準値の一を下回った段階で危険な建物であることに変わりはない」と説明する。「建て替えか耐震補強かは住民の判断に委ねる」としている。
つまり国の支援策は数値上の線引きで分けたにすぎず、ある構造計算の建築士は「建物を限定して補助するのもおかしな話」と批判する。
強度の最終的な判断は、現地調査や施工状況を含めた耐震診断の結果を待たないと難しい状況で、川口市のマンションでは現在の補強工事の方針を見直さなければならない事態も想定される。
開発を主導する建築主をはじめ、施工、設計の各業者、見逃した検査機関、それに監督責任を持つ国・行政−。関係者が複雑に絡み合い、責任の所在が見えにくい一連の耐震強度偽装事件。原因究明の中で各者の責任の範囲を明確にしていくことが、再発防止に向けて欠かせない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/stm/20051214/lcl_____stm_____000.shtml