2005年11月18日(金) 01時36分
<ニセ耐震>一級建築士、首都マンションなどの書類を偽造(毎日新聞)
国土交通省は17日、千葉県市川市の建築設計事務所が、首都圏のマンション20棟とホテル1棟の耐震強度を測る「構造計算書」を偽造していたと発表した。国指定の民間確認検査機関も偽造書類を見抜けず、このうちホテルを含む14棟が完成済みで、少なくとも川崎市と船橋市のマンション2棟が耐震基準に到達していなかったことが判明。鉄筋などの数が少なく、必要強度の3〜7割で、震度5強程度の地震でも倒壊する恐れがあり、同省は同事務所や事務所とかかわった設計者らを建築基準法違反容疑などで警視庁に告発する検討も始めた。
同省は地元自治体とともに住民への説明を始め、補強工事や建て替えが必要かどうかを検討、全国の民間確認検査機関や自治体に一斉点検を指示した。また居住者転居の受け皿として公営住宅などの活用を要請した。
偽造していたのは、千葉県市川市富浜2の「姉歯(あねは)建築設計事務所」。姉歯秀次・1級建築士(48)が個人で経営し、構造計算を得意分野として、主に元請けの設計事務所から構造計算分野を受注していた。
千葉県の調べに対して姉歯建築士は、ホテル以外の偽造書類を作ったことを認めたうえで、「コスト削減のプレッシャーがあった」と話しているという。
21棟の内訳は、工事中と未着工を含めて東京都内が11棟(うち完成済みは9棟)、千葉県内が6棟(同2棟)、神奈川県が4棟(同3棟)。完成済みの14棟は、04年〜今年に完成した分譲・賃貸合わせた13棟(471戸)と、東京都中央区内のビジネスホテル1棟。工事中の建物はすべて工事中止となった。
構造計算は、建築物が▽震度6弱の中規模程度の地震で損壊しないか▽震度6強〜7の地震でも生命を守られるか——などをコンピューターを使って算出。ところが姉歯建築士は、本来入力すべき数値の半分程度のデータを入力して算出、正規の書類と混在して提出していたという。
千葉県のこれまでの調べでは、姉歯建築士はこのほかに、過去5年間で90棟の設計書作りにかかわっていたことを示す手書きのメモなどを持っていたといい、同省などが物件の特定を急いでいる。
一方、姉歯建築士が偽造した構造計算を確認しないまま、国指定の確認検査機関に提出した元請け設計事務所は計6社。確認検査機関が再計算などを行わなかったため、偽造を見抜けなかった。
確認検査機関の「イーホームズ」(東京都新宿区)が、社内の一斉監査で、過去の不審書類20棟分を発見。10月26日から順次、国交省に届けた。別の1棟は、同「東日本住宅評価センター」(横浜市鶴見区)が検査して発覚。いずれも姉歯建築士によるものだった。【長谷川豊、竹中拓実】
◇ことば…構造計算書
重力や風圧、地震などの外部からの力に建造物が耐えられるために必要な鉄筋の本数や柱の太さを計算した書類で、建築士が作成する。マンションやホテルなど一定の規模以上の建物については、建築基準法に基づき、建主は建築確認をする際に、行政機関か民間確認検査機関に設計図とともに提出することが義務付けられている。一般的な木造2階建て住宅などは提出は不要となっている。
(毎日新聞) - 11月18日1時36分更新
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