2005年11月18日(金) 14時57分
検査機関、ずさん計算書を見落とし…耐震強度偽装(読売新聞)
姉歯建築設計事務所の偽造構造計算書で建てられた「湊町中央」ビル
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1都2県のマンションやホテルの耐震性を示す「構造計算書」が偽造されていた問題で、千葉県市川市の建築設計事務所が提出した計算書は、強度が基準を満たしている場合に印字される「認定番号」がないなど、極めてずさんなものだったことが18日、国土交通省などの調べでわかった。
建築確認を代行した民間の指定確認検査機関は、こうした単純で重大な不備を見落としており、同省では検査機関に対し、建築基準法に基づく行政処分を検討している。検査機関は同省に対し「審査の方法に誤りがあった」などと説明している。
同省や千葉県の調べによると、偽造を認めた「姉歯建築設計事務所」(千葉県市川市)は、国交相が認可した構造計算用のコンピューターソフトを使って構造計算をしていた。このソフトでは、建物の柱や梁(はり)の本数、建物にかかる外力の数値などを入力し、計算の結果、必要な強度を満たしていると判定されると、計算書の各ページの左上部分に、8ケタの英数字の「認定番号」が印字されることになっている。
同設計事務所では、少ない鉄筋、薄い壁で建てるため、外力の数値を約半分に設定するなど工作したが、コンピューターは「強度不足」と判定。認定番号の印字のない「不合格」の書類しか出なかった。このため、同事務所では、認定番号のない書類を、正規の数値を入力して計算した別の書類の間に紛れ込ませて、そのまま検査機関に提出していた。
また、計算書提出の際には、使ったプログラムが国交相の認可を受けたものであることを示す大臣印入りの「認定書」を添付しなければならないが、それも添付されていなかった。
同省建築指導課では「認定番号の印字や認定書の有無は、ごく基本的なチェック項目。そんな偽造を見落とすとは考えにくい」として、検査機関から事情を聞いている。
偽造物件21棟のうち20棟の建築確認を代行した「イーホームズ」(東京都新宿区)は、読売新聞の取材に対し、「偽造は巧妙で、簡単には見破れないものだった。当社としては適切な業務を行っていたと思っている」と説明。
一方、国交省に対しては「構造計算書に添付すべき認定書などは確認しなくてもいいと誤解していた。審査の方法に誤りがあった」などと説明していた。
また、千葉県船橋市のマンションの建築確認を代行した「東日本住宅評価センター」(本社・横浜市)では、今月11日、国交省の指摘を受け内部調査をするまで、計算書の偽造に気付かなかったという。担当者は「認定番号がついていなければならないという認識がなかった」と説明しているという。
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国交省は18日、問題となっている21棟のうちの1棟が、川崎市川崎区中瀬3の「グランドステージ川崎大師」であることを公表した。
(読売新聞) - 11月18日14時57分更新
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