2005年11月15日(火) 03時07分
<連帯保証人>知的障害の男性、自宅失う 債務者は失跡(毎日新聞)
福井県に住む知的障害のある男性(49)が、消費者金融で借金した知人の男(50)に連帯保証人にされ、担保として自宅の土地・建物を競売される被害に遭っていたことが分かった。男はその後、行方不明。NPO法人「障害児・者人権ネットワーク」(事務局・東京都中央区)は「連帯保証し、自宅まで失ってしまうのは、聞いたことがなく極めて深刻」としている。
男性は軽度の知的障害で、合理的な判断能力に乏しい。中学を卒業後に職業訓練を受け、パチンコ店など職を転々とし99年ごろ失業。母親が昨年亡くなって1人暮らしとなり、親族が生活を支えていたが、現在は障害者施設に入所している。
関係者や男性によると、知人の男はパチンコ店に勤務していた当時の客。林業を営み、男性は失業後、枝打ちを手伝うなどしていた。02年4月、男から公園に呼び出され、契約書への署名押印を求められた。住所、氏名、押印欄以外は、金額欄を含め大半が黒いシートで覆われていた。当初は拒否したが「返済できる」と強引に要求され、応じてしまったという。
連帯保証額は250万円。男性が親から相続した木造2階建て住宅(延べ約110平方メートル)と土地(約150平方メートル)に根抵当権が設定されていた。男が借金を返さなかったため、03年3月に福井地裁で競売開始が決定。通知書などの郵便は自宅に届き、受け取っていたらしいが、男性は「覚えていない」と話す。
今年6月に購入者が決まり、8月に競売を知った男性の妹(46)が、男の家を訪ねたが行方が分からなくなっていた。男性は自宅を立ち退いた。妹は「兄の理解力が乏しいのを利用した」と憤り、男性は取材に「家がなくなるとは分からなかった。悔しい」と話した。
消費者金融側は取材に対し「調査の結果、契約は適正だったと考えている」とコメントした。
消費者金融に損害賠償を請求しても、契約書に自筆署名と押印があり、男性が1人で生活もしていたため、意思無能力による契約無効が認められるかは、判断が分かれている。相手が失跡しているため、詐欺などで被害を届けても捜査が難しい状況だ。【田辺一城】
■ことば(保佐人と補助人) 民法の成年後見制度の法定後見は、後見、保佐、補助の3類型がある。軽度の知的障害や認知症の場合、判断力を「常に欠く」状態ではないので、後見人は選任できない。一方、「著しく不十分」「不十分」と認められれば保佐人や補助人が選任でき、不動産処分など特定の法律行為について同意がなければ、取り消しが可能。親族や市町村長の申し立てで家裁が選任する。
(毎日新聞) - 11月15日3時7分更新
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