2005年11月04日(金) 02時35分
ヤミ金被害など救済 日弁連、ロビイスト育成 立法支援 来春にも新組織(産経新聞)
日本弁護士連合会(日弁連)は、法律の立案や制定を国会議員や政府に働きかけたりすることを専門業務にする「ロビイスト」の弁護士育成の検討を始めた。立法働きかけのノウハウを持たないNPO(民間非営利団体)や社会的弱者の声を代弁した活動をしたい考えだ。十二月に開かれる業務改革委員会での審議を経て、来年三月にもロビイストが所属する組織を立ち上げ、早期の活動開始を目指す。(赤堀正卓)
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構想は日弁連内の「新分野開拓プロジェクトチーム」で検討されている。日弁連内に新組織「立法支援センター」を立ち上げ、三十人ほどの弁護士をロビイストとして所属させたい考えだ。
ロビイストの活動には、ヤミ金融や振り込め詐欺の被害者を救済する法整備や、小規模なNPOの活動支援といった、立法による支援が欲しくても、そのための具体的活動手段やノウハウを持たなかった人たちのための立法支援が想定されそう。日弁連の活動の一環として行うため、依頼者から報酬を取ることは想定されていない。
ヤミ金被害救済などでは、これまでは個々の弁護士が立法を働きかけた経緯があるが、それをロビイストに担わせることで、より強力かつ組織的に立法を実現させることを狙う。法案を持ち込むことも想定される。
プロジェクトチームでは「立法支援センター」が立ち上がり次第、立法技術習得のための研修会開催や活動のルール作りを急ぎ、早期に実際のロビー活動を始めたい考えだ。将来的には、地方議会などへの働きかけも検討したいという。
ロビイスト育成の構想の背景には、司法制度改革により弁護士の数が増えていることがある。法知識を生かした活動分野を広げることが可能な環境になっているからだ。
また、弁護士が厳格な職業倫理に基づく立法支援をすることで、日本歯科医師連盟のヤミ献金事件のように、不正な方法で立法に影響を与えようとする活動を牽制(けんせい)したい−という狙いもある。
プロジェクトチームの小原健弁護士は「弁護士が個々に持っていた立法支援のノウハウを集約・蓄積して、社会的な弱者のためになる活動をしていきたい」と話している。
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≪専門知識、高まる信用 本家の米≫
企業や団体の立場を代弁して、議員や官僚に立法などを働きかけることを職業とするロビイスト。専門知識と人脈が財産で、米国で広く認知されている職業だ。国会議事堂のロビーで活動することから、その名が付いた。
“本家”の米国では、ロビイストになるには特段の資格が必要なわけではない。ただ、最近は弁護士資格を有する人の比率が高まっているようだ。ロースクール(法科大学院)がロビイスト教育を行うようになってきた影響が出ているとみられる。
ロビイストをめぐっては、莫大(ばくだい)な成功報酬を得ることを目的に、金を使って働きかけを行うなど、手段を選ばない活動ぶりが指摘され、ダーティーな印象が持たれた時代もあった。しかし、一九七〇年代からはさまざまな規制や改善がされ、最近は社会的な信用も高まっているという。
日弁連のプロジェクトチームが行ったカリフォルニアでの調査によると、七〇年代から活動の際の登録や、依頼者の名前や相談内容、報酬などの情報が開示されるようになったという。成功報酬も禁止されている。
それぞれのロビイストは、銀行、保険、エネルギーといった得意分野を持ち、依頼者からの要望を受け付けている。
(産経新聞) - 11月4日2時35分更新
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