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2005年11月04日(金) 15時05分

<平成電電>投資家に「口止め」 「契約に守秘義務」毎日新聞

 経営破たんした通信ベンチャー「平成電電」(東京都渋谷区、佐藤賢治社長)=民事再生手続き中=を巡り、一般投資家から約490億円の出資金を集めた2社が、投資家と結んだ契約書の秘密保持条項を理由に、契約内容などの情報をマスコミをはじめ第三者に話さないよう求めていることが分かった。投資家は、元金返還の見通しなどについて2社から十分な説明がないことに不満を募らせており「騒ぎが大きくなることを恐れ、口止めしようとしている」と反発している。
 投資家から相談を受けた弁護士は「配当が停止されたり、元金返還の見通しが立たない状況下では、契約の前提が崩れており、契約上の守秘義務が有効とはいえない」と指摘している。
 平成電電の事業に匿名組合契約で出資を募った「平成電電システム」(熊本徳夫社長)と「平成電電設備」(同)は、東京地裁が10月17日、平成電電の民事再生手続き開始を決定したのを受け「ご報告」と題する同19日付の文書を全国約1万9000人の投資家に郵送。その中で「組合員(投資家)から多く寄せられた質問」として18項目を紹介し、Q&A方式でそれぞれの質問に回答した。
 このうち「匿名組合についての情報をマスコミに提供したり、第三者に話してもよいですか」との質問に対して「組合員(出資者)の皆様は、匿名組合契約に基づく秘密保持義務を負います。マスコミや第三者に対して契約内容のお話しをされることはご容赦いただきたい」と回答した。
 こうした見解に、埼玉県内の男性は「平成電電の業績を把握せずに出資を募り続ける注意義務違反を犯しながら、出資者に義務を課すのは脅しと同じで言語道断」と反発。別の男性も「出資金がどうなるのか不安なのに、誰にも相談するなと言うのか」と憤る。
 2社は平成電電が経営破たんを公表した10月3日以降、投資家に文書での報告を3度行っただけで説明会を開いておらず、投資家の苦情・相談窓口はフリーダイヤルに限られているのが実情だ。2社の本店は千代田区丸の内のビルの一室にあったが、平成電電が破たんした数日後から閉鎖された状態が続いている。【川辺康広】
 ▽ことば(匿名組合契約) 商法が定める出資形態の一つで、出資者(組合員)が営業者に出資し、利益が分配される。出資者には営業に関与する権限はなく、表面に出ないことから、匿名組合契約と呼ばれる。集めた資金の使途は、特定の事業に限定されている。
 ◇条項無効の可能性 
 松岡久和・京都大大学院教授(民法)の話 契約書に守秘義務条項を付けること自体は普通にあるが、契約上で生じたトラブルを第三者に相談することまで禁じる趣旨のものはあまり見ない。そのような条項は紛争の解決手段を著しく制限し、公序良俗に反する法律行為を無効とする民法90条や、消費者保護を目的とした消費者契約法10条により、無効になる可能性があり、契約者は守秘義務には縛られない。
(毎日新聞) - 11月4日15時5分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051104-00000064-mai-soci