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2005年10月29日(土) 00時00分

個人情報提供、被災者のためなのに読売新聞

東京・中野区、課長を訓告 都など不快感

 9月の集中豪雨で床上浸水の被害を受けた東京都中野区の約800世帯について、税の減免や受信料免除が受けられるよう、同区の担当課長が住所と氏名を都税事務所とNHKに提供したところ、「個人情報保護条例に違反した」として、今月24日付で訓告処分を受けていたことが分かった。都や識者からは、疑問や批判の声が上がっている。

 同区などによると、被害が出た9月4日から間もなく、中野都税事務所とNHKから、減免措置を周知するため被災者情報を提供してほしいとの依頼があった。担当課長は該当者の経済的負担を軽くできると思い、被災者名簿から、救済対象となる床上浸水世帯の世帯主と住所だけを抽出してリストを作り、各担当者に手渡した。名簿は目的だけに使用され、NHKは後に返還した。

 ところが、受信料免除の申請書をNHKから送られた一部住民が「個人情報が勝手に提供されている」と苦情を寄せたことなどを機に、区議会で問題化。田中大輔区長が「安易に提供した」と陳謝する事態となり、同区長は24日付で、「条例に違反して被災者名簿を外部提供し、区の信用を失墜させた」として、担当課長を訓告、上司を口頭注意とした。

 区条例は、「個人情報を収集目的の範囲を超えて外部に提供してはならない」と定めているが、「法令に基づく場合」「生命、健康または財産に対する危険を避けるため緊急かつやむを得ないとき」などは例外。

 同区によると、課長は例外にあたると判断したが、区では後に、「緊急性はなく不適切で、800人の同意を得るか、(条例で定めた)審議会で意見を聞くまで待つべきだった」(総務部)と判断。今後は「原則提供しない」としている。担当課長も、区議会で謝罪を余儀なくされた。しかし、区役所内にも、「被災者の便宜を図るためで、『個人情報』という言葉に過剰反応していないか」と疑問視する声もある。

 読売新聞の取材に、担当課長は「被災者の方を少しでも援助できればと思った。処分については何も言えない」と話している。

 これに対し、都主税局幹部は「最終的に不利益を被るのは住民ではないか」と、要請に応じた区課長の処分に不快感を隠さない。

 都税の軽減や猶予は本人が申請しないと適用されないため、これまでも災害時には区市町村に問い合わせて被災者リストを作り、通知に役立ててきた。地方税法も、官公庁に税務調査の参考資料の閲覧・提供を求められるとしており、同局は「被災者情報を問い合わせるのも、応じるのも正当な行為だ」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6000/fe20051029_01.htm