2005年10月17日(月) 02時56分
優良葬祭業へ発給「IDカード」 偽造品売買が横行(産経新聞)
葬祭業の業界団体が優良業者に発給する「葬祭ディレクター」資格のIDカードの偽造品が出回り、業者の間で売買されていたことが分かった。価格設定などが不透明といわれがちな業界が、消費者の信頼向上のために設けた資格だが、一部の無資格業者が悪用しようとしたらしい。業界団体は、既に偽造カードの製造元を突き止めて回収を指示したとしているが、偽造カードが出回ったことを消費者には公表していなかった。
偽のIDカードは、本物の「ディレクター」が携行する名刺大のカードの様式に似せて作られており、資格者の写真も入っている。ただ本物の発行元が資格試験の実施組織「葬祭ディレクター技能審査協会」なのに対し、偽物は「日本メモリアル文化協会」と実体のない団体名になっていた。
昨年暮れに、技能審査協会に「偽物カードが売られている」との告発があったことから、協会が調査を開始。その結果、京都府内の葬儀業者の社員が偽カードを作成し、知人の葬儀用品問屋を通じて一枚十五万円で販売していたことが、今年の夏までに分かったという。少なくとも二十枚近くが山形、茨城、岐阜、長崎などで売買されたようだ。
協会では、「資格に対する消費者の信頼を失墜させかねない確信的詐欺行為」として、九月末までに、本人から謝罪文を取るとともに、売られたカードの回収を命じ、販売数の把握を進めている。
商標権侵害の民事訴訟や詐欺罪などでの刑事告発といった法的措置を取ることも検討していたが、本人が勤務先の会社を解雇されたことなどから、見送る方針だという。
「葬祭ディレクター」は、「祭壇などの値段が不透明」といわれがちな業界で、消費者の信頼を得るために業界団体が十年前に創設した資格。これまでに約一万二千人が資格を得ている。
協会の審査員も務める業界専門誌「SOGI」の碑文谷創・編集長は「資格への認知度が広がってきたことから、最近は資格の有無を業者を選ぶ際の基準にする人もいる。そんな中で、資格を持っていない業者が、焦りなどから偽カードを利用しようとしたのではないか。業界ばかりでなく、消費者の信頼を裏切る許せない行為だ」と話している。
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葬祭ディレクター 葬祭業界の団体、全葬連と全互協(いずれも東京)が中心になって平成7年に創設した資格。厚生労働省の認定を受けている。葬祭業者の知識・技術向上や、消費者からの信頼度向上が目的。(1)葬儀での行政手続きや会場設営などの知識(2)葬儀会場での幕張装飾の実技(3)遺族らの気持ちを酌みながら葬儀の説明−などが試される。10年間で1万8500人が受験し、1万2000人が合格。社員の8割近くが資格を持っている業者もある。カードは消費者・遺族などに接する際に胸につける。
(産経新聞) - 10月17日2時56分更新
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