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刑事訴訟法に基づく警察の正式な捜査照会に対し、各地の病院や自治体などが個人情報保護法などを理由に回答を拒否するケースが、今年4月の同法全面施行から6月までの3か月間だけで、約500件に上っていることが警察庁の調査で分かった。うち約4割は医療機関で、福岡県のように県警と県医師会が「出来るだけ捜査に協力する」と申し合わせたところもある。医療関係者は、厚生労働省や日本医師会の作成した同法関係の指針が誤解や拡大解釈を招き、独り歩きしている影響があると指摘している。
保護法は、本人の同意なく第三者に個人情報を提供することを原則禁じているが、「法令に基づく場合」「生命、身体、財産の保護のため必要な場合」「本人の同意を得ることで事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」などは例外と明記されている。「法令」には、令状による捜査や、刑訴法197条に基づく捜査照会なども含まれる。
しかし、実際には、捜査に協力を得られないケースが相次いでいるため、警察庁は、刑訴法に基づく「捜査関係事項照会書」を医療機関などに示して協力を求めたのに拒否されたという例を調べた。
警察庁では「保護法の全面施行前はあまり見られなかった現象で、捜査に深刻な支障が出ている」として、調査結果を詳細に分析するとともに、今後、関係機関に理解を求める方針。医療関係者は、厚労省や日本医師会の指針に「照会に応じても保護法違反ではないが、本人から損害賠償を求められるおそれもある」などと記されている点を挙げる。これに対し、同省では「一般論として例示しただけで、過剰に受け取られるのは本意ではない」としている。
福岡県警、県医師会に協力要請…初動捜査の遅れ懸念個人情報保護法に対する過剰反応が、実際に捜査の支障になっている実態が浮かび上がった。法律に基づく正式な捜査照会に応じない、聞き込みや電話での問い合わせも拒む……。協力しないことが本当に適切か、応じれば違法なのか。こうした点を十分考慮しないままの対応に捜査関係者は危機感を募らせている。
正式な文書での捜査照会以上に、口頭での問い合わせへの影響は深刻だ。
福岡市博多区にあるJR九州の車庫敷地内で4月、電車の屋根に上った男性が架線に触れ、全身やけどを負った。博多署員は搬送先の病院で「身元を教えてほしい」と要請したが、プライバシー保護を理由に拒まれ、身元確認に数時間かかった。
その後、男性は自ら敷地に入っていたことが判明したが、当初は事件被害者の可能性も捨てきれなかった。署員は「『早く身元をはっきりさせなければ』ともどかしかった」と振り返る。事件であれば、初動捜査の遅れが大きなマイナスになるからだ。
福岡県警は4月の保護法全面施行後、病院側の照会拒否が月20〜30件に及んだため、県医師会に協力を要請。9月上旬、〈1〉警察の照会には出来るだけ協力〈2〉電話での照会には、かけ直して警察と確認したうえで対応〈3〉死者に関する情報は保護法の対象外——など5項目を申し合わせた。
こうした取り組みについて、警察庁は「全国で初めてではないか。今後のモデルケースになる」と評価する。