2005年10月15日(土) 18時29分
実名明かしネット交流、「SNS」に人気(読売新聞)
「不特定多数」による「匿名」の交流が特性と考えられてきたインターネットの世界。そんな中、「知り合いからの招待」により「実名」で参加する会員制の「ソーシャルネットワーキングサービス」(SNS)が人気だ。
入会には会員の「招待状」を必要とするSNSが大半だが、すでに会員数が150万人に達しているものもあり、趣味や生活、ビジネスなどで活発な交流が行われている。SNSはネットの匿名性の限界をうち破れるのだろうか。
「あった!」
埼玉県川越市の斉藤アヤ子さん(39)は、国内最大のSNS「mixi(ミクシィ)」で、自分と同じ血液型「RhマイナスAB」の人の「コミュニティ」を見つけ、パソコン画面に向かって思わず声を上げた。
同じ血液型は日本人で2000人に1人と言われている。それまで祖父以外には知らなかった。「何となく似たところがあったりするのかなあ」という好奇心から、そのコミュニティに参加した。
掲示板には、出血を伴う出産時の心配など、少数派の血液型を持つ人共通の悩みや、アドバイスが書き込まれていた。実名だから安心感がある。
約80人のメンバーの一部がきょう15日、都内で初めて実際に顔を合わせる。「SNSで知り合った絆(きずな)の強さを感じています。もし『血が足りなくて困っている』というSOSがあったら駆けつけたい」と斉藤さんは考えている。
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実名ネットならではの再会もある。
「もしかして同じ学年じゃないかなあ? 私、覚えてると思うよ」。ハーブのネットショップを開く横浜市の村尾恵子さん(29)は7月、SNSでこんな書き込みを見つけてびっくりした。
メッセージの主は小学6年の時の仲良しだった。卒業後は別の中学に進み、音信不通となっていた。「私も覚えてますよ〜」とさっそく返事を出した。2人のやりとりを見た級友3人も名乗り出て、近いうちに18年ぶりのクラス会が実現するかもしれない。
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SNSは2003年、米国で誕生したとされる。日本では昨年2月、イー・マーキュリー社がミクシィを開設し、会員は現在約150万人。音楽やスポーツ、グルメなど、同好の士が集まるコミュニティが30万もある。参加は原則無料で、同社はページ上の広告から収入を得るというビジネスモデルだ。
自治体でも、熊本県八代市が昨年12月、SNS「ごろっとやっちろ」を開設した。メンバーは市民を中心に約1450人。子育てママが情報を交換したり、宴会好きが集まるなど、市側の予想を超え、地域活動の起爆剤となっている。
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多くのSNSでは、入会には「招待状」が必要だが会員登録の際に本人確認は行われない。その気になれば、他人になりすましたり偽名を使うことも可能だ。
SNS「GREE(グリー)」の広報担当は、「マルチ商法のようなものをもちかけられたという苦情は時々あるが、犯罪を助長するような悪質なコミュニティの例はあまりない」と話す。イー・マーキュリーも、「悪質なコミュニティや個人への中傷などは放置するつもりはなく、対策を講じていく」としている。
だが、大手SNS利用者の漫画家、いしかわじゅんさん(54)は「利用者が10万人を超えたあたりから、悪意のある書き込みを多く目にするようになった」と話す。IT業界に詳しいフリーライターの速水健朗さん(31)も、「規模が大きくなると、仮に犯罪の温床となったとしても、管理者は完全にチェックできないのではないか」と語る。
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さいたま市で音楽活動をしている朝霧裕さん(26)は、生まれつき筋力が弱い難病のウェルドニッヒ・ホフマン病で、24時間介護が必要だ。情報量が限られる求人誌でのヘルパー募集に限界を感じ、数日前からSNS上で募集の呼びかけを始めた。
まだヘルパーは見つかっていない。だが、「プロフィルを明かしているので、私のことを分かったうえで応募してもらえるのではないか」と、実名ネットの可能性に期待をかけている。
(読売新聞) - 10月15日18時29分更新
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