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2005年09月21日(水) 00時00分

アスベスト新法 幅広い救済が必要だ 東京新聞

 政府が検討中のアスベスト(石綿)による健康被害者の救済新法は、国と企業の責任明確化とともに、できるだけ多くの人を救済する視点が必要だ。国民が納得できる制度を提示してほしい。

 厚生労働省や環境省などの新法の担当者は、総選挙で圧勝した与党の“圧力”を肌身に感じている。先月二十六日のアスベスト問題に関する関係閣僚会議で今月末までに具体的な結論を得ることが決まっている。「各省間の調整もあり作業はきつい」とぼやく。

 アスベスト救済新法の決定は選挙目当てだったとの批判もある。だが大事なことは、現実にがんや中皮腫などの病気に見舞われる被害者が急増し、今後何十年も同様の被害者が続出する恐れがある点だ。

 一日も早い救済新法の成立が望ましい。法案提出は来年の通常国会の予定だが、今月末までの作業で“骨太の内容”がどこまで進むかがポイントだ。

 新法ではまず、国と企業の責任を明記する必要がある。有害鉱物を大量に使ってきた企業の直接責任は明確である。同時に、これまでの行政の不作為と怠慢で被害が拡大したことを考えれば、国家的損害賠償が行われてもおかしくはない。

 だが国の責任については各省とも「過去何もしなかったわけではない」と否定的だ。新法は「あくまでも健康被害者の救済を行うためのもの」と補償ではないとの立場だ。いつもの責任回避の姿勢では、将来の新たな危険物質による健康被害の防止ができるのか疑問になる。

 救済する対象者の範囲はできるだけ広く行うべきだ。閣僚会議の決定では「現行の労災保険法や公害健康被害補償法の枠組みでは救済できない者」となっている。労災補償保険制度は労働者が対象だが、死亡してから五年以上経過すると時効となり労災申請ができない。また家族や周辺住民も対象外だ。こうした人たちの救済が重要となる。

 公害健康被害補償制度も厳しい。適用するには著しい大気汚染による被害があるなど、三つの要件を乗り越えなければならない。環境省は「四十年前の汚染状況を把握し、汚染原因者を特定することは難しい。アスベストの飛散は一キロ程度と限定的で大気汚染のように地域指定などはできない」と地域指定とアスベスト問題はなじまないとの姿勢だ。

 それならどうしたら適切に対処できるのか知恵を絞るべきだ。環境行政の主管官庁が腰を引いていては新法は危うい。被害者に対する思いやりをもって取り組んでもらいたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20050921/col_____sha_____003.shtml