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2005年09月21日(水) 00時00分

不払いに悲鳴 『法的措置』明言 再生へ窮余の“強権” 東京新聞

 一連の不祥事を契機に、百万件を超える受信料の支払い拒否・保留に苦しむNHKが、二十日に発表した改革の基本方針「新生プラン」。受信料の法的督促や、職員の一割削減など、外にも内にも厳しく臨む姿勢が示された。視聴者の「善意」に基づいて運営してきた公共放送の大きな方向転換ともとれるが、果たしてNHKは再生できるのか。 (放送芸能部・井上幸一)

 ◆不公平感

 「誠心誠意、説得を重ねても、重ねてもご理解いただけない場合、最後の手段として督促を検討したい」

 橋本元一会長は、新生プランの発表会見で、受信料の不払いに対する法的措置導入を明言。強制執行の可能性を問われると「ケース・バイ・ケース。ぜひ、払ってもらいたい人もいる」と否定しなかった。

 NHKが狙うのは、今回の不祥事以降、不払いに転じた視聴者だけではない。

 テレビがあるのにNHKと契約を結んでいない「未契約者」(二〇〇四年度末で推計八百五十三万世帯)も、放送法上、支払う義務があるとして訴訟を検討している。未契約者は、NHKが本来払うべき世帯とする約四千三百万世帯の約二割に当たり、受信料問題を契機に浮上した、公共放送の“陰”の部分だ。

 背景には、受信料を払っている視聴者から、不払い者への反発が強まり、「不公平だ」との怒りが蓄積している状況がある。

 NHKは、「歌謡コンサート」(今月二十七日)の入場者を、受信料負担者に限定する試みを行ったが、視聴者から寄せられた声は賛否がほぼ半々だった。「NHKに意見を言ってくる場合は、抗議や注文が多いが、支持する声が半分も来たのは珍しい」(幹部)といい、負担者の不満の大きさを証明する。

 弁護士によると、督促の金額が五万円以下の場合、一件につき印紙代、切手代で千三百八十円かかる。橋本会長は「辞令発令のように一斉にはやらない」と話すが、来年度以降の“強権発動”は十分ありそうだ。

 ◆リストラ

 受信料収入の減少で、上半期の収入は二百二十億円の不足が発生した。冷房温度を二八度に抑えたり、資料を両面印刷にしたり、清掃回数を減らしたりと、組織を挙げてケチケチ作戦を展開しているが、焼け石に水、というのが実態だ。

 新生プランでは、三年間で全職員の10%、千二百人を削減する。追い込まれて、民間並みのリストラをせざるを得なかったようだ。

 NHK出身の戸崎賢二・東邦学園大教授(メディア論)は「すでにNHKは長期にわたり人員を削減している。職員の過密労働や、番組の質の低下が問題だ」と指摘する。プランでは、番組制作の外部委託を増やして対応するとしているが、「NHKだからできる放送を追求する」との方針と矛盾しかねない。

 民放幹部からは「肥大化、巨大化」と批判もされてきたNHK。民間なら当然との声もあるが、リストラは、組織をゆがませる危険性をはらむ。

 ◆疑問の声

 立教大の服部孝章教授(メディア法)は「収入が減収になったので初めて受信料とは何なのかとか、リストラの話が出てくる。あまりにも遅すぎる」と批判する。法的措置については「未契約者への裁判は、学界でも意見が分かれる」とし、「個別に申し立てをするので、印紙代だけでも、すごい金額になる」と費用対効果の面でも疑問を呈する。

 「国民の善意に基づく受信料制度は、収入が右肩上がりだったので、奇跡的に続いてきたが、実態は“ザル”。税金的なシステムにするのか、電気や水道のようにペイ・パー・ビューにするのか、チャンネルごとに契約するのか…、根本的な議論が必要になってくるのではないか」。服部教授は次のステップについて、こんな見通しを述べた。

■新生プランの骨子

一、公共放送としての使命を果たすため、何人からの圧力や働きかけにも左右されることなく放送の自主自律を貫く

一、災害・緊急報道、福祉番組、ドキュメンタリーなどNHKだからできる放送を追求

一、二〇〇六年度から三年間で全職員の10%、千二百人を削減するなどスリム化を推進

一、受信料制度の意義など説明の努力を重ねても受信料が支払われない場合、民事手続きによる支払い督促の活用などを検討。受信料の公平負担に取り組む


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050921/mng_____kakushin000.shtml