2005年09月10日(土) 02時58分
選挙“賭け”サイト出現 アクセス17万件(産経新聞)
オッズ公開 公選法に抵触の恐れ
衆院選をめぐり、インターネット上で全選挙区の勝者を予想、賭けの対象とし、最高十万円の懸賞金が得られる「懸賞付きゲーム」のホームページ(HP)が、ネットベンチャーによって開設され、十七万件ものアクセスがあったことが九日分かった。選挙が公然と“賭け”の対象とされるのは異例だ。同社は、賭けの要素が伴った懸賞を一定範囲で認める景品表示法の枠内で運営しているとしてきたが、公正取引委員会や総務省は問題視。賭博罪や公選法違反など違法性が問われる可能性があるが、今回の選挙への高い関心を裏付ける“過熱現象”といえそうだ。
このHPはネットベンチャー「コンパス」(東京都港区)が運営する「eBet(イーベット)」。会員登録(無料)し、このHP上のゲームや買い物、アンケートに回答すると、無料のポイントがたまり、ポイントに応じて、最終的に換金できる仕組み。ゲームの一つに「Bet」と呼ばれるクイズ問題があり、正解を答えると、賭け倍率に応じてポイントが増えるが、同社はここに公示日以降、全選挙区の勝敗を予測するクイズや「自民党の獲得議席数は?」「郵政造反議員三十七人のうち何人が当選するか?」などの問題を大量に掲載した。
これまでに十七万件を超えるアクセスがあり、「賭け」に参加した件数は延べ四万件を突破した。
同社は「商店街が合法的に実施する懸賞付きクイズを、ネットのショッピングモール(商店街)で大々的に行うイメージ」と説明。景品表示法の枠内で賞金額などを設定すれば「賭博」としての違法性が問われなくなるため、同法が規定する「一般懸賞」に沿い、(1)換金額は最高十万円まで(2)換金する場合は、換金額に応じた一定比率の買い物を義務付ける−などの条件を課した。
勝利と予想された候補者に設けられた賭け倍率(競馬でいうところのオッズ)も、公選法一三八条で禁じた「人気投票の公表」に抵触するとして、同社は伏せている。投票が締め切られた十一日午後八時に一斉に公表する予定で、「違法性はない」としていた。
これに対し、景品表示法を所管する公取委は「景品や懸賞、賞金というのは、あくまで買い物に付随してくるもの。このHPは、ゲームがメーンであり、買い物に付随する形ではない。これでは景品表示法の対象とはいえず、同法の適用を受けることはできない」(景品表示監視室)との見解を示した。
また公選法を所管する総務省は“オッズ”について、「公選法は人気投票の公表を禁じる時期を定めておらず、投開票後であっても、倍率を公表した場合には同法に抵触する恐れがある」と違法性を指摘している。
警察庁は「個別の事案への是非を公表することはできない」としているが、「賭け」の要素が伴った懸賞を一定の範囲で認めた景品表示法の“保護”を受けられないとなれば、同社の行為は違法性をはらむ賭博としての性格が出てくる。
コンパスの話 「娯楽性を維持するよう努めつつ、法も踏まえたつもりだったが大変残念だ。専門家を交えて対応を協議しており、今後、違法性が問われないよう再検討する」
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◆賭博と違法性
警察当局によると、賭博は一般に「偶然の勝敗で財物や財産上の利益の得喪を争う行為」と解釈されている。一方で刑法35条は、「法令または正当な業務による行為は罰しない」とも定めている。競馬法に基づき運営される競馬など、公営ギャンブルが賭博罪で処罰されないのはこのためだ。小泉内閣が進めていた構造改革特区で盛り上がった「カジノ容認論」も、「カジノ特別法」を制定し、一定のルールを定めて認めれば、賭博罪で処罰できなくなり、合法化できるというものだ。
商店街がイベントで買い物客に実施する福引、懸賞付きクイズなども景品表示法で一定程度認められ、違法性は問われない。「一般懸賞」の場合、「抽選やじゃんけんなど偶然性を用いる」「パズルやクイズの正誤、作品や競技の優劣等」の方法で、懸賞額を「取引額の20倍で最高10万円」「懸賞総額は売り上げ予想額の2%」までとし、eBetはこの規定に目をつけた。
ただ、景品表示法や競馬法といった枠組み内のルールに沿っていない場合は、賭博として認定され、賭けに参加した人も処罰される恐れがある。
(産経新聞) - 9月10日2時58分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050910-00000000-san-soci