2005年09月06日(火) 03時47分
児童ポルノの疑い120点、国会図書館が閲覧制限(読売新聞)
児童ポルノのはんらんが問題になっている中、国立国会図書館(東京都千代田区)は、蔵書のうち児童ポルノの疑いのある120点について館の許可がないと見ることのできない閲覧制限を始めた。
これだけ大量の制限は創立から57年の歴史で初めて。法律上、同館にはほぼすべての出版物が納められ、原則公開することになっているが、昨年の児童買春・児童ポルノ禁止法改正により児童ポルノ本の閲覧に違法性が出てきた。館は「違法出版物は放置できないが、過剰な制限も好ましくない」と法律のはざまで悩む。
国立国会図書館法は、広く頒布される出版物について出版社や省庁に納本を義務づけている。文化財蓄積や国会審議の資料収集などのためで、同館は最大限国民が享受できるようにする義務を負う。
しかし、わいせつなものやプライバシー侵害にあたるものもあり、同館は裁判の有罪判決などを根拠に閲覧制限してきた。1948年の創立から完全な利用禁止が148点、部分的閲覧など条件つき制限が50点。わいせつな写真集や雑誌などが多いが、省庁が誤って納めた非公開の内部文書も半分近くを占める。
18歳未満の裸などを扱った児童ポルノとみられる本の納入が目立ち始めたのは、80年代後半から90年代初め。当時はまだ規制する法律が整備されておらず、制限の根拠に乏しかった。
99年の児童買春・児童ポルノ禁止法の施行で公然陳列が禁じられたが、図書館のように申し込んだ個人に閲覧させる行為までは違法と解釈されなかった。ただ、同館では疑いのある本は閲覧場所をガラス張りの別室とし、複写も認めないように自主規制した。
さらに、昨年7月の改正法施行で、児童ポルノの提供行為が幅広く禁じられ、館が今春、法務省に相談したところ「図書館が所持するのは基本的に閲覧目的。明らかに児童ポルノとみられる書籍は所持すべきでない」と閲覧に加えて所蔵も同法違反になる可能性を指摘された。
同館では、蔵書を調べて7月から疑いのある本を順次選定。いずれも同法施行以前に発行された雑誌や写真集などだが、閲覧者に名前と住所、勤務先、閲覧目的の記入を求めた上で許可するかどうかを判断する条件付きの閲覧制限を行っている。
制限があるとは言え、閲覧自体は可能なままとなっていることについて、同館は「一定の歯止めにはなる。裁判などで違法と断定されていない書籍まで我々が児童ポルノと決めつけるわけにいかず、慎重になった」と説明している。
館では今後、さらに数百冊について利用制限を検討するほか、制限のあり方や所持の妥当性について法務省や警察庁などとも協議を進める考えだ。
(読売新聞) - 9月6日3時47分更新
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