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たばこのやにで薄汚れた壁や、置いた家具のためにへこんだクッションフロア。そんな生活の痕跡を「全部きれいにしてもらわなければ困る。クリーニングやリフォーム費用を敷金から差し引きます」などと、家主側に言われた経験をもつ人も多いだろう。
「原状回復」について定めた国土交通省の「ガイドライン」は、借り手が負担すべき修復を、故意や過失で破損した部分に限っている。普通に暮らして生じる建物の汚れや破損は、本来は家主側が毎月の家賃で賄うという考え方だ。つまり、入居時に払った敷金や保証金は、家賃滞納の担保として預けたお金。不始末がなければ全額返還が原則で、清掃料や補修費を敷金から引くのはガイドラインに反する。
だが、経験豊富な家主や管理会社を相手に、交渉を対等に進めるのは簡単とはいえない。専門家に支援を求めるのが有効な場合もある。
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敷金返還の交渉支援を掲げ、最近設立された株式会社リカバリジャッジ(名古屋市)は、「家主側からの請求額が八万円以上になる場合に利用してもらえば得になるはず」という。
「八万円」は、これまで試験的に扱った約百件の実績から算出した。明らかな過失などがない場合、国交省のガイドラインがあいまいな部分に配慮しても、入居者の負担は「多くて一万五千円程度」というのが一つの根拠。そこに、同社の利用料金が五万三千七百二十円。これは家主側との交渉資料となる詳細な査定書の作成費、交通費など。さらに、敷金返還の少額訴訟に発展した場合の印紙代などを含めても、支出は合計八万円以内で済むというわけだ。
査定書は、内装などの経験がある同社の査定士が、ガイドラインに沿って現場を調べ、補修が必要な部分は「壁紙やタイルなどの費用はほぼ原価で見積もる」という。
ただし、弁護士などとは違い仲介はできないので、交渉はあくまで借り手本人が行う。既に引っ越した人だけでなく、これから引っ越す人も対象にしている。
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関西の弁護士や司法書士らでつくる「敷金問題研究会」は、借り手側の敷金や原状回復などで相談を受け、一斉提訴を支援。敷金返還は当然の権利との考え方を、全国に広めている。
相談料は「格安だが有料」。交渉や訴訟の依頼をした場合は別途費用もかかる。公正取引委員会の指導で弁護士も司法書士も一律基準を廃止しているため、具体的な金額は明示していない。
公的機関や民間の支援団体を利用するのも手。ただ、中には活動内容があいまいで、内閣府から「市民への説明の要請」を受けたNPOなどもあるので、団体のPRをうのみにせず、価格や支援内容を吟味する必要がある。
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東京都消費生活総合センターには昨年度、賃貸住宅の敷金に関する相談が七百五十三件。センターとしての対応は、その九割がトラブル防止の「助言」。実際にセンターが貸し手側と交渉しての「あっせん・解決」は、十九件(速報値)。
「家主が大手不動産業者などでなく個人の場合は、個人間トラブルの扱いになるので、公的機関が介入することは難しい」という事情もある。
トラブルを防ぐには、まず入居時に契約書の中身を確かめること。明け渡し時の原状回復が、必要以上に借り手側の負担になっているような場合は、事前に改善交渉することが大切だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050728/ftu_____kur_____000.shtml