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東京都北区の東京成徳大学中学校の講堂。約百六十人の中学一年生と父母約二十人が参加して「ケータイ安全教室」が開かれた。
「携帯電話はプラスの面とマイナス面があります」と、壇上でインストラクターの林利夫さんが説き始める。「チェーンメールって聞いたことある人は?」
パラパラと手が挙がる。
「これは迷惑メールの一つで、『別な人にこのメールを送ってください』として、次々つながるメールのこと。四人に送るのを十回続けたら百万人以上の人に迷惑をかけることになる。転送しないでください」
「では出会い系サイトってわかりますか?」
数人が手を挙げた。
「被害者の80%は女の人で犯罪に巻き込まれるケースもあります」と林さんは深刻な表情。そのほか「迷惑メール防止機能を活用しよう」「電車、病院、自転車運転中や歩行中の電話はやめよう」「本を買わずにカメラ機能で撮影するデジタル万引はやめよう」などと注意を喚起した。
NTTドコモがケータイ安全教室を始めたのは五月末。先月末までに約五十校から申し込みがあった。同社の担当者が学校へ出向くが、費用はかからない。
同社の社会貢献担当主査の下鳥亨さんは「昨年、小学校からマナー教室をやってほしいという要望があった」と始めた理由を話す。
国際的にみると携帯電話普及率は台湾やイタリア、イギリスなどで100%ほど。日本はまだ普及率68%程度ながら、技術面はトップレベル。子どもへの普及が進むにつれ、場合によっては犯罪者と子どもを携帯電話が直接結んでしまう危険も指摘されるようになってきた。利益を得る側の事業者が子どもへの講習に取り組むのは当然ともいえるが、こうしたマナー教室は世界でも珍しいという。
東京成徳大学中学校の増澤文徳情報科主任は「たいていの学校は携帯電話を排除しようとしていますが、これからは、それでは済まされない。ならばきちんとマナーを教えた方がいいと思って来てもらった」と話す。コンピューターやインターネットを通じて情報を取り扱うための知識や能力を意味する「情報リテラシー」について、同校では週一回教えているという。
同校では携帯電話所持を認めている(一年生は許可制)が、校内と学校周辺での使用はダメ。親の一人、金谷君枝さん(40)は「まだ携帯電話は持たせていないがこれから子どもと相談しようと思う」と話した。
いったい、子どもたちの携帯電話所持率はどれぐらいなのだろうか。
ベネッセコーポレーションが昨年暮れ、全国の小学四年から高校二年生一万五千人を対象に実施した調査によると、小学生の二割、中学生の半分、高校生は九割以上が所持しているという。
高校生の八割が「ケータイがないと不便」と感じ、半数以上が「電話やメールが来ないとさみしくなる」と依存的な傾向をみせている。その傾向は女子の方が高いことも分かった。
成徳大学中学一年の田島大揮くん(12)は「七歳の時から持っている。塾や習い事で、連絡をつけるのに持たされた。料金が高いので、調べ物や着メロのダウンロードはしない」という。
同じクラスの大野真由美さん(12)は「宿題とか友達に聞いたりできて便利。あんまりしゃべらないクラスの子と、メールだとコミュニケーションができたりする。でも、メールで、間違った意味で伝わったことがある。便利だけど、難しさもある」と話していた。
文・吉岡逸夫/写真・高嶋ちぐさ、吉岡逸夫
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