2005年06月29日(水) 15時04分
<犯罪被害財産>国が没収、被害者分配へ 関連法案今秋提出(毎日新聞)
犯罪被害者対策の一環として、法務省は、犯人が被害者から得た財産(犯罪被害財産)を没収・追徴したうえで、被害者に分配して損害回復を図る新たな制度を設ける方針を固めた。被害者は、犯人側からの報復を恐れて民事訴訟を起こすこともなく泣き寝入りするケースが目立っていた。同省は来月、法制審議会に新制度を諮問し、答申を受けたうえで、組織犯罪処罰法改正案などの関連法案を今秋の臨時国会に提出する意向だ。
00年に施行された同法は、犯罪組織がマネーロンダリングで隠した資産などを幅広く没収・追徴する規定を設ける一方、被害者が民事訴訟で損害を取り戻すのが困難になるとの理由で、犯罪被害財産については没収・追徴を禁じた。しかし、実際には訴訟費用の負担や報復を恐れて泣き寝入りする被害者は少なくないのが現状だ。
指定暴力団山口組五菱会(二代目美尾組に改称)の組織的ヤミ金融事件では、「ヤミ金の帝王」と言われた梶山進被告(55)=1審実刑、控訴中=ら主な幹部3人に対し、検察側が90億円余の没収・追徴を求刑したが、東京地裁は「犯罪被害財産に当たる」として認めなかった。だが、梶山被告らを提訴した被害者は一部にとどまり、犯罪収益が梶山被告らに戻る恐れも出ている。
新制度の導入にあたって法務省は、没収・追徴した犯罪被害財産を国庫に帰属させずに一時保管したうえで、被害者からの申し出を審査して分配し、残余金を国庫に入れる仕組みを検討しているとみられる。保管・分配の具体的な方法や、被害者から分配に異議があった場合の手続きなどについて詰めの協議をしている模様だ。
五菱会の事件では、犯罪収益がスイスなど海外の銀行に隠されていたことも判明している。このため法務省は、犯罪被害財産が外国にあった場合でも、その国から返還を受けて被害者に分配するための法整備も併せて行う方針だ。【森本英彦】
(毎日新聞) - 6月29日15時4分更新
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