2005年06月26日(日) 13時06分
<悪質リフォーム>年金夫婦は上客 元営業マン、その手口は(毎日新聞)
「狙うのは年金生活の夫婦」「『ご苦労さま』と言う人は契約を取りやすい」——。昨年まで約3年間、大手リフォーム会社の営業担当だった男性(38)が毎日新聞の取材に応じた。男性はシステムバスの販売を担当。近隣での工事を装い、欠陥がなくてもあるように指摘するなど消費者心理につけ込む手口や、マニュアル作成、演技指導を行うなど会社側の「社員教育」の実態などを赤裸々に語った。【須山勉】
■近くで工事
営業マンは工事監督の服装で、近隣で工事をしているように装い、割り当て地域の各戸を回る。「この先の工事で、前の道をウチの車が何度か行き来するかもしれませんので」と明るく元気にあいさつする。
この際「分かりました」という人より「ご苦労さま」と応じる人の方が話が進む。帰り際に「あ、そうだ。おうちの横から出ている水を止めておかないとダメですよ」などと話しかけると「どこ?」と聞き返す確率が高いからだ。こうした問題点の指摘を、業界では「投げかけ」と呼ぶ。
■演技力がすべて
古い家の風呂だと、外側の基礎部分に水のシミがあることが珍しくない。営業マンは「ここだ。かなり染みちゃってるな」と驚いてみせる。ひざをつき、顔を近づけるなどして心配しているように振る舞う。
「どこ?」と言われたら、自分の影でも何でも色づいている所を指して「こんなになっている」。「どうすればいいかしら?」と問い返す人も少なくない。これで家に入るきっかけができる。
■役割分担
風呂場に案内されたら、排水口のふたを開けるなどし「他の業者に見せると壊さないといけない」と持ちかけ、「原因調査」のために自社の「専門家」を勧める。実際は「つなぎ」と呼ぶ別の営業マンが訪問し、ハンマーでたたくなどし「水が回ってますね」などと“診断”。風呂はダメと思いこませる。
この際も「近くで工事しているから、今なら安い」と言うのは忘れない。「いくら?」と来れば、後は「クローザー」と言われる契約担当者が登場する。
■マニュアル
営業トークはマニュアルでほぼ統一され、上司による「演技指導」もあった。ただ、マニュアルは手口を変えていくため、頻繁に更新される。最高の客は年金生活の夫婦暮らし。経済的余裕があるからだ。営業所での朝礼で、営業マンは一人ずつ大声で「今日は絶対『年金AB(年金暮らしの夫婦のこと)』両面アポにこだわります」と誓わされていた。
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男性は東京都内での約3時間のインタビューの最後に言った。「老い先が短いお年寄りは『将来を考えて』という言葉に弱い。周囲からそんな言葉をかけられていないから。訪問販売の被害が絶えないのは、孤立している人が多いためじゃないですか」
(毎日新聞) - 6月26日13時6分更新
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